グルタミン酸トランスポーターの薬理学

グルタミン酸は興奮性神経伝達物質として認知·記憶·学習などの高次神経機能に密接に関与している.その一方で高濃度のグルタミン酸は神経細胞を傷害する.神経伝達を効率的に行うと同時に神経細胞死を防ぐために,シナプスでのグルタミン酸濃度は細胞膜上に存在するグルタミン酸トランスポーター(Excitatory Amino Acid Transporter: EAAT)により常に低濃度に維持されている.一方神経細胞内のグルタミン酸は,シナプス小胞に存在するグルタミン酸トランスポーター(Vesicular Glutamate Transporter: VGLUT)によりシナプス小胞に取り込み貯蔵され放出に備え...

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Veröffentlicht in:日本薬理学雑誌 2003, Vol.122(3), pp.253-264
Hauptverfasser: 茂里, 康, 島本, 啓子
Format: Artikel
Sprache:jpn
Schlagworte:
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Beschreibung
Zusammenfassung:グルタミン酸は興奮性神経伝達物質として認知·記憶·学習などの高次神経機能に密接に関与している.その一方で高濃度のグルタミン酸は神経細胞を傷害する.神経伝達を効率的に行うと同時に神経細胞死を防ぐために,シナプスでのグルタミン酸濃度は細胞膜上に存在するグルタミン酸トランスポーター(Excitatory Amino Acid Transporter: EAAT)により常に低濃度に維持されている.一方神経細胞内のグルタミン酸は,シナプス小胞に存在するグルタミン酸トランスポーター(Vesicular Glutamate Transporter: VGLUT)によりシナプス小胞に取り込み貯蔵され放出に備えられる.EAATは5つのサブタイプ(EAAT1-5),VGLUTは3つのサブタイプ(VGLUT1-3)がこれまでに知られている.EAATはNa+依存性トランスポーターで,グルタミン酸1分子の取り込みに連動して,2~3分子のNa+の流入,1分子のH+の細胞内への流入と細胞外へ1分子のK+の流出が起きる.またこれらとは別に,基質取り込みと連動していないCl−の流入が存在する.一方VGLUTはATPやH+およびCl−に対する依存性を有し,グルタミン酸に対する基質特異性が高い点等EAATとはかなり性質が異なっている.EAATおよびVGLUTの機能·発現制御は様々な神経疾患(脳卒中,てんかん,アルツハイマー病,エイズ関連の痴呆,ハンチントン舞踏病,筋萎縮性側索硬化症,悪性神経膠腫等)と関わっていることが示唆されている.これらのトランスポーターの生理的役割を調べるためには選択的な阻害薬が不可欠であり,グルタミン酸誘導体を初めとする非天然型アミノ酸などが有効なツールとして開発されてきている.
ISSN:0015-5691
1347-8397
DOI:10.1254/fpj.122.253