カルシウム拮抗薬のモルヒネ鎮痛増強作用機序
〔目的〕ATP依存性薬物排出ポンプであるP糖タンパク質(P-gp)は血液脳関門として機能し, モルヒネはその基質のひとつであると報告されている. 一方, モルヒネ鎮痛はカルシウム拮抗薬により増強され, その機序として神経細胞内へのカルシウム流入阻害が考えられてきた. しかし, カルシウム拮抗薬は, 培養細胞においてP-gpの阻害作用を有することも知られている. そこで, P-gpをコードする遺伝子の一つであるmdr laの欠損マウスを用い, カルシウム拮抗薬のモルヒネ鎮痛増強作用におけるP-gpの関与について検討した. 〔方法〕実験には雄性FVBマウス(野生型マウス)およびmdr la遺伝子欠...
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Veröffentlicht in: | 日本薬理学雑誌 2001, Vol.117 (2), p.36-36 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 〔目的〕ATP依存性薬物排出ポンプであるP糖タンパク質(P-gp)は血液脳関門として機能し, モルヒネはその基質のひとつであると報告されている. 一方, モルヒネ鎮痛はカルシウム拮抗薬により増強され, その機序として神経細胞内へのカルシウム流入阻害が考えられてきた. しかし, カルシウム拮抗薬は, 培養細胞においてP-gpの阻害作用を有することも知られている. そこで, P-gpをコードする遺伝子の一つであるmdr laの欠損マウスを用い, カルシウム拮抗薬のモルヒネ鎮痛増強作用におけるP-gpの関与について検討した. 〔方法〕実験には雄性FVBマウス(野生型マウス)およびmdr la遺伝子欠損マウス(KOマウス)を使用した. 鎮痛検定はTail-pinch法に従い, モルヒネ皮下投与後15分間隔で120分間測定した. また, モルヒ投与-15分後に血液および脳を採取し, HPLC-ECD法に従ってモルヒネの血中濃度・脳内含量を測定した. カルシウム拮抗薬(ベラパミル:20-10mg/kg)はモルヒネ投与30分前に処置した. 〔結果および考察〕KOマウスのモルヒネ鎮痛は, 野生型マウスのそれに比し約2.8倍強く発現した. KOマウスの血中モルヒネ濃度は野生型マウスのそれとほぼ同程度であったが, KOマウスの脳内モルヒネ含量は野生型マウスのそれに比し有意に高値を示した. ベラパミル処置により, 野生型マウスのみならずKOマウスのモルヒネ鎮痛も増強し, モルヒネの血中濃度および脳内含量はいずれのマウスでもさらに高値を示したが, 脳内含量/血中濃度比はベラパミル処置により減少した. 以上の結果より, 1)P-gpが血液脳関門としてモルヒネの脳内移行を抑制することが明らかになり, 2)ベラパミルのモルヒネ鎮痛増強作用には, P-gpの阻害作用よりもむしろ, それによる血中モルヒネ濃度の上昇とそれに伴う脳内モルヒネ含量の増加が関与する可能性が示唆された. |
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ISSN: | 0015-5691 |