遺伝子の発現誘導を伴う新規な薬物間相互作用

〔目的〕骨髄移植時の移植片宿主病予防を目的に, dexamethasone(DEX)とcyclosporin A(CyA)が併用されているが, CyAの血中濃度が安定しない症例の多いことが臨床で問題となっている. 本研究は, ラットを用いてDEXによる遺伝子誘導が, CyAの体内動態にどのような影響を与えるかを検討した. 〔方法〕DEX低用量(1mg/kg/day)あるいは高用量(75mg/kg/day)を8週齢Wistar系雄性ラット腹腔内に連続投与した後, CyA(10mg/kg)を静脈内あるいは経口投与し, 血中濃度推移を測定した. RT-PCR法によりmdrla,mdrlb,CYP3A...

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Veröffentlicht in:日本薬理学雑誌 2000, Vol.116 (4), p.304-304
Hauptverfasser: 嶋田努, 田辺公一, 伊藤香江, 横川弘一, 宮本謙一
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:〔目的〕骨髄移植時の移植片宿主病予防を目的に, dexamethasone(DEX)とcyclosporin A(CyA)が併用されているが, CyAの血中濃度が安定しない症例の多いことが臨床で問題となっている. 本研究は, ラットを用いてDEXによる遺伝子誘導が, CyAの体内動態にどのような影響を与えるかを検討した. 〔方法〕DEX低用量(1mg/kg/day)あるいは高用量(75mg/kg/day)を8週齢Wistar系雄性ラット腹腔内に連続投与した後, CyA(10mg/kg)を静脈内あるいは経口投与し, 血中濃度推移を測定した. RT-PCR法によりmdrla,mdrlb,CYP3A2のmRNA量あるいはWestern blotting法にてタンパク質発現量の変化を調べた. 〔結果〕DEX低投与量を7日間連続投与すると小腸でmdrla,mdrlb mRNAの発現は明らかに増加した. また, CyAの静脈内投与後の血中濃度推移は, コントロール群と差はなかったが, 経口投与の場合はコントロール群より有意な低値で推移し, CyAのバイオアベイラビリティーは, DEXの投与回数に依存して低下した. 一方, 高投与量のDEXでCyAの主代謝酵素であるCYP3A2も誘導された. そして, CyAは経口投与だけでなく, 静脈内投与でもコントロール群に比べて有意に低い血中濃度推移を示した. 全身クリアランスもDEXの投与回数に依存して有意に上昇した. 〔考察〕DEX低投与量ではP-糖タンパク質の誘導が起こったことより, CyAのバイオアベイラビリティー低下は, 小腸上皮に過剰発現したP-糖タンパク質が消化管管腔側へのCyAの排出が亢進したためと考えられた. 一方, DEX高投与量ではP-糖タンパク質だけではなくCYP3A2も誘導されたため, CyAの全身クリアランスも低下した. 以上より, 薬物間相互作用メカニズムの一つとしてトランスポーターや薬物代謝酵素系などの遺伝子発現の誘導を伴う機序を考慮する必要のあることを示した.
ISSN:0015-5691