ラットを用いた放射線宿酔モデルの確立
悪性腫瘍の放射線療法では照射後に悪心・嘔吐などの副作用(放射線宿酔)が現れることがあり, 患者にとって極めて不快な症状となる. 発症には上部消化管のクロム親和性細胞から遊離されるセロトニン(5-HT)と腹部迷走神経終末に存在する5-HT_3 受容体が関与すると考えられ, 予防・治療には主に5-HT_3 受容体拮抗薬の投与が行われている. しかし, 詳細な発症機序が未だ明らかではないため, 確実な予防法や治療法が現在も確立できていない. 一方, ラット・マウスなど汎用される実験動物は嘔吐を起こさないため, 悪心・嘔吐に関する研究に用いられることが少なく, この領域の研究推進の隘路となっていた....
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Zusammenfassung: | 悪性腫瘍の放射線療法では照射後に悪心・嘔吐などの副作用(放射線宿酔)が現れることがあり, 患者にとって極めて不快な症状となる. 発症には上部消化管のクロム親和性細胞から遊離されるセロトニン(5-HT)と腹部迷走神経終末に存在する5-HT_3 受容体が関与すると考えられ, 予防・治療には主に5-HT_3 受容体拮抗薬の投与が行われている. しかし, 詳細な発症機序が未だ明らかではないため, 確実な予防法や治療法が現在も確立できていない. 一方, ラット・マウスなど汎用される実験動物は嘔吐を起こさないため, 悪心・嘔吐に関する研究に用いられることが少なく, この領域の研究推進の隘路となっていた. しかし, われわれは, ラットに加速度刺激や催吐性薬物を与えるとカオリン(ケイ酸アルミニウム水和物)などの無栄養物を摂取する行動(パイカ)を取ることから, このパイカ行動を用いた嘔吐モデルの確立を行ってきた. そこで, 本研究では, 放射線照射によってもパイカ行動が惹起されるかどうかを検討し, 放射線宿酔モデルの確立を試みた. X線(4MV)を全身照射すると, 線量に依存したカオリン摂取量の増加がみられ(sham:0.05±0.03g, 2Gy:0.38±0.09g, 4Gy:1.27±0.32g, 8Gy:3.55±0.58g), 4Gyの照射によるパイカ行動はオンダンセトロン(2mg/kg:i.p.)を前投与することで有意に抑制することができた(対照:1.49±0.33g, オンダンセトロン:0.75±0.11g). また, 頭部あるいは腹部に照射部位を限局したところ, 腹部照射のときのみにパイカ行動が現れた(頭部:0.06±0.01g, 腹部:0.37±0.05g). 以上より, ラットのパイカ行動に伴うカオリン摂取量によって, 放射線宿酔による悪心・嘔吐の重症度を定量的に評価できる動物モデルを確立することができた. |
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ISSN: | 0015-5691 |