S-ニトロソシステインによるホスホリパーゼA2-アラキドン酸放出の抑制

神経系においてアラキドン酸(AA)や一酸化窒素(NO)は逆行性神経伝達物質として, あるいは細胞内セカンドメッセンジャーとして機能していると考えられている. また脳虚血時などでは, その部位や近傍においてAAやNOまたそれらの代謝物の生成量が増加していることが報告されている. NOによってシクロオキシゲナーゼの発現誘導が調節されることが明らかにされているが, AA放出に関与しているホスホリパーゼA2活性に対するNOの作用は明らかにされていない. 本研究では神経細胞のモデルとしてPC12細胞を用い, 各種NO化合物のAA放出に対する作用を検討した. 実験結果および考察 1)Caイオノフォアやハチ...

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Veröffentlicht in:日本薬理学雑誌 2000, Vol.115 (2), p.143-143
Hauptverfasser: 村山俊彦, 野村靖幸
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:神経系においてアラキドン酸(AA)や一酸化窒素(NO)は逆行性神経伝達物質として, あるいは細胞内セカンドメッセンジャーとして機能していると考えられている. また脳虚血時などでは, その部位や近傍においてAAやNOまたそれらの代謝物の生成量が増加していることが報告されている. NOによってシクロオキシゲナーゼの発現誘導が調節されることが明らかにされているが, AA放出に関与しているホスホリパーゼA2活性に対するNOの作用は明らかにされていない. 本研究では神経細胞のモデルとしてPC12細胞を用い, 各種NO化合物のAA放出に対する作用を検討した. 実験結果および考察 1)Caイオノフォアやハチ毒マストバランは[3-H]AA標識したPC12細胞からAA放出を促進させた. 2)AA放出は細胞質型ホスホリパーゼA2の阻害薬AACOCF3で阻害された. 分泌型ホスホリパーゼA2阻害薬は無効であった. 3)イッムノブロッテング法により分子量100kDaの細胞質型ホスホリパーゼA2蛋白質の存在が確認された. 4)S-ニトロンシステインは濃度依存的にAA放出を抑制した. S-ニトロンシステインと前処理し, その後洗浄した細胞においてもAA放出は有意に抑制されていた. 5)SNP(sodium nitroprusside)などの他のNO化合物は抑制作用を示さなかった. NOラジカルを放出しcydic GMP含量を増加させるNOC化合物も抑制作用を示さなかった. 6)細胞質型ホスホリパーゼA2のシステイン残基をアルキル化し活性抑制作用を示すN-ethylmaleimide(NEM)も非可逆的にAA放出を抑制した. NOは蛋白質のシステイン残基をS-ニトロソ化することが報告されていることから, S-ニトロソシステインが細胞質型ホスホリパーゼA2をS-ニトロン化し活性を抑制したと考えられる.
ISSN:0015-5691