ラット腸間膜血管床における新たな微小循環観察法

〔目的〕腸間膜には実質細胞が殆ど無く, 直視可能な血管が多数含まれるため, 微小循環系の研究に広く用いられている. しかし, 実体顕微鏡-CCDカメラ-コンピューター画像解析を組み合わせたこれ迄の方法では, 血管内に適用した薬物の作用を細動静脈のレベルで評価することは難しい. 今回, このような従来法の問題点を改良する目的で, 新たなシステムの構築を試みた. 〔方法〕腸間膜血管床に対する循環反射の影響を除くため, ラットをtetorodotoxin(TTX;100μg/kg, i.v.)で処置するとともに, 心臓及び他血管床の薬物反応に起因する腸間膜血管床の血圧/血流量の変動を避けるため, 右...

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Hauptverfasser: 石黒晶子, 鹿児島正豐, 中原努, 石井邦雄
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:〔目的〕腸間膜には実質細胞が殆ど無く, 直視可能な血管が多数含まれるため, 微小循環系の研究に広く用いられている. しかし, 実体顕微鏡-CCDカメラ-コンピューター画像解析を組み合わせたこれ迄の方法では, 血管内に適用した薬物の作用を細動静脈のレベルで評価することは難しい. 今回, このような従来法の問題点を改良する目的で, 新たなシステムの構築を試みた. 〔方法〕腸間膜血管床に対する循環反射の影響を除くため, ラットをtetorodotoxin(TTX;100μg/kg, i.v.)で処置するとともに, 心臓及び他血管床の薬物反応に起因する腸間膜血管床の血圧/血流量の変動を避けるため, 右大腿動脈と上腸間膜動脈との間に体外循環回路を設け, ポンプにより自家血で定流量灌流(1ml/min)を行った. TTXによって低下した血管の緊張度を維持するため, phenylephrine(PHE;30μg/kg/min)を体外循環回路中に持続投与した. また, 血管床全体の抵抗変化を観察するため, 体外循環回路の灌流側圧を測定した. 本実験は, すべて人工呼吸下に行った. 〔結果〕自発呼吸下の麻酔ラットを用いた従来法による実験では, 静脈内に投与したPHE, isoproterenol(ISO), sodium nitroprusside(SNP)およびnicardipine(NIC)は, 何れも血圧と心拍数に影響を与えたものの, 腸間膜細動静脈径(どちらも100μm前後)に対しては顕著な作用を示さなかった. 一方, 今回構築したシステムを用いた場合, 体外循環回路へのISO, SNP及びNICの投与は, 軽微な全身血圧と心拍数への影響とともに, 細動静脈径の増大と灌流圧の低下を引き起こした. 〔考察〕末梢神経活動, 心機能, 血圧, 血流分布, 呼吸, 麻酔深度等の変動の影響が除かれた本実験法は, 血管作動性物質の腸間膜細動静脈における薬理作用を観察するために有用であることが示された.
ISSN:0015-5691