カルシニューリンと脳虚血

一過性脳虚血により海馬のCA1錐体細胞が遅発性に死に至ることはよく知られており(1), その細胞死のメカニズムについては, グルタミン酸-Ca2+仮説が有力である(2). 脳虚血によって神経終末から放出されたグルタミン酸は受容体を刺激して, 細胞外から細胞内へのCa2+流入およびCa2+貯蔵部位の小胞体からCa2+放出を起こし, 細胞内のCa2+濃度を上昇させる. Ca2+濃度の上昇により, Ca2+依存性のタンパク分解酵素や, リン酸化酵素, 脱リン酸化酵素などの活性が上昇し, 種々の生化学的, 生理学的, 形態学的変化が引き起こされる(2~4). 脳虚血後, おもにどの酵素を介して細胞死が...

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Veröffentlicht in:日本薬理学雑誌 1998, Vol.111 (1), p.21-28
Hauptverfasser: 橋本健志, 川又敏男, 田中千賀子
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:一過性脳虚血により海馬のCA1錐体細胞が遅発性に死に至ることはよく知られており(1), その細胞死のメカニズムについては, グルタミン酸-Ca2+仮説が有力である(2). 脳虚血によって神経終末から放出されたグルタミン酸は受容体を刺激して, 細胞外から細胞内へのCa2+流入およびCa2+貯蔵部位の小胞体からCa2+放出を起こし, 細胞内のCa2+濃度を上昇させる. Ca2+濃度の上昇により, Ca2+依存性のタンパク分解酵素や, リン酸化酵素, 脱リン酸化酵素などの活性が上昇し, 種々の生化学的, 生理学的, 形態学的変化が引き起こされる(2~4). 脳虚血後, おもにどの酵素を介して細胞死がもたらされるのかはよくわかっていないが, その可能性の高い酵素のひとつが, カルシニューリン(CaN)である. 本稿では, CaNの遅発性神経細胞死への関与についてこれまでの研究報告と我々の研究結果を概説する.
ISSN:0015-5691