血小板活性化因子によるシナプス応答の二重制御

血小板活性化因子(PAF)は長期増強の逆行性メッセンジャーとして知られているが, PAFには本来炎症性疾患のケミカルメディエーターとしての役割もあり脳内におけるPAFの役割については未だ不明の点が多い. 今回我々はパッチクランプ法により培養ラット海馬ニューロンのシナプス応答に対するPAFの作用を(1)作用動態, (2)用量依存性, (3)生理的役割と有害作用の点から検討したので報告する. 薬液の急速投与はY字管法を用いて行った. 培養7~14日目の海馬ニューロン(膜容量37.2±0.8pF)は保持電位-40mVで振幅214±25pA, 頻度18.4±1.6回/分のAMPA/kainate受容体...

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Veröffentlicht in:日本薬理学雑誌 1997, Vol.109 (2), p.1077-1077
Hauptverfasser: 徳冨直史, 福永浩司, 徳冨芳子, 宮本英七, 西勝英
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:血小板活性化因子(PAF)は長期増強の逆行性メッセンジャーとして知られているが, PAFには本来炎症性疾患のケミカルメディエーターとしての役割もあり脳内におけるPAFの役割については未だ不明の点が多い. 今回我々はパッチクランプ法により培養ラット海馬ニューロンのシナプス応答に対するPAFの作用を(1)作用動態, (2)用量依存性, (3)生理的役割と有害作用の点から検討したので報告する. 薬液の急速投与はY字管法を用いて行った. 培養7~14日目の海馬ニューロン(膜容量37.2±0.8pF)は保持電位-40mVで振幅214±25pA, 頻度18.4±1.6回/分のAMPA/kainate受容体興奮性シナプス後電流(e.p.s.c.)を発生した. PAFは低濃度(10^-8 M)でe.p.s.c.振幅を154±6.5%に増強し, その増強は長期増強に類似して長時間(>60分)持続した. 一方濃度の上昇に伴ってe.p.s.c.に対するPAFの作用は増強から抑制へと転じ, 10^-6 Mで45±4.1%の長時間持続(>60分)の抑制を引き起こした. さらに高濃度(10^-5 , 10^-4 M)ではe.p.s.c.はほぼ完全に消失し, さらにAMPA/kainateおよびNMDA受容体拮抗薬に抵抗性の持続性陽イオン電流が惹起され, 膜電位固定下では細胞死のケースが見られた. しかしながら高濃度(10^-4 M)PAF存在下で長期(5日間)培養した海馬標本には細胞死や受容体応答の変化などは全く見られず, e.p.s.c.頻度の減少(5.8±2.3回/分)とミクログリアの著明な増殖が観察された. 以上より血小板活性化因子は濃度に依存して長期増強と長期抑圧の2つの役割を兼備した逆行性メッセンジャーである可能性が示唆された.
ISSN:0015-5691