サル網膜中心動脈に存在する血管拡張性神経について

血管緊張性の神経性調節は, これまで交感神経活性の強弱によって述べられてきた. しかし, 最近, 同神経機能と生理的に拮抗作用を示す拡張神経か血管壁に存在することが明らかになりつつある. 今回は, 内皮を除去した摘出サル網膜中心動脈標本に対し, 電気的あるいは化学的に神経刺激を加え, 生じる張力変化を指標にして, 拡張性神経の存在を検討し, その神経性弛緩作用機序を分析した. 実験によっては組織学的な検討を加えた. あらかじめプラゾシン(10^-5 M)を前処置し, プロスタグランディンF_2α で前収縮させたサル網膜中心動脈標本(外径300-400μm)に経壁電気刺激(TES)あるいはニコチ...

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Veröffentlicht in:日本薬理学雑誌 1997, Vol.109 (2), p.1057-1057
Hauptverfasser: 岡村富夫, 戸田恵美, 吉田一秀, 安屋敷和秀, 戸田昇
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:血管緊張性の神経性調節は, これまで交感神経活性の強弱によって述べられてきた. しかし, 最近, 同神経機能と生理的に拮抗作用を示す拡張神経か血管壁に存在することが明らかになりつつある. 今回は, 内皮を除去した摘出サル網膜中心動脈標本に対し, 電気的あるいは化学的に神経刺激を加え, 生じる張力変化を指標にして, 拡張性神経の存在を検討し, その神経性弛緩作用機序を分析した. 実験によっては組織学的な検討を加えた. あらかじめプラゾシン(10^-5 M)を前処置し, プロスタグランディンF_2α で前収縮させたサル網膜中心動脈標本(外径300-400μm)に経壁電気刺激(TES)あるいはニコチンを適用すると, 弛緩作用が観察された. 同弛緩作用はそれぞれテトロドトキシンあるいはヘキサメトニウムにより消失した. この神経性弛緩作用はチモロール, アトロピン, インドメタシンでは影響がないが, オキシヘモグロビンおよびN^G -ニトロ-L-アルギニン(L-NA)により消失した. L-NAによる抑制作用は, L-アルギニンの添加により消失し, 神経性弛緩反応は回復した. [8-37]CGRPおよび[4Cl-D-Phe^6 , Leu^17 ]VIPを, それぞれCGRPおよびVIPによる弛緩作用を著明に抑制する濃度を用いても, 神経性弛緩反応にはまったく影響がなかった. 神経由来の一酸化窒素(NO)合成酵素に対する免疫組織学的検討により, 同動脈壁に陽性神経および線維束の分布が観察された. 以上のことから, サル網膜中心動脈にはNO作動性の拡張神経が存在し, 機能していることが明らかになった. 同神経は生理的な網膜循環調節に関与する可能性が示唆される.
ISSN:0015-5691