二価鉄イオンによるNMDAチャネル開放の調節

【目的】鉄イオンは脳虚血時, 脳内出血時あるいはパーキンソン病患者の脳内では高濃度に存在することが知られており, これらの疾患発症メカニズムにおける鉄イオンの病態生理学的意義は特に興味深い. 演者らは鉄含有化合物であるニトロプルシッドナトリウムとフェロシアン化カリウムがともに, N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)チャネル遮断作用を持つ可能性について第69回本学会年会および第89回近畿部会で報告した. したがって, 今回は鉄イオンのNMDAレセプターに対する効果を解明する目的で, 塩化第一鉄(II)および塩化第二鉄(III)のNMDAレセプター結合に対する影響を解析した. 【方法】ラット...

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Veröffentlicht in:日本薬理学雑誌 1997, Vol.109 (2), p.1043-1043
Hauptverfasser: 首藤誠, 荻田喜代一, 米田幸雄
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:【目的】鉄イオンは脳虚血時, 脳内出血時あるいはパーキンソン病患者の脳内では高濃度に存在することが知られており, これらの疾患発症メカニズムにおける鉄イオンの病態生理学的意義は特に興味深い. 演者らは鉄含有化合物であるニトロプルシッドナトリウムとフェロシアン化カリウムがともに, N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)チャネル遮断作用を持つ可能性について第69回本学会年会および第89回近畿部会で報告した. したがって, 今回は鉄イオンのNMDAレセプターに対する効果を解明する目的で, 塩化第一鉄(II)および塩化第二鉄(III)のNMDAレセプター結合に対する影響を解析した. 【方法】ラット脳より調製した粗シナプス膜標品を用いて, [^^3 H]MK-801結合を測定した. 【結果】塩化第一鉄(II)は, 10^-5 M以上の濃度で濃度依存的に[^^3 H]MK-801結合を阻害したが, 塩化第二鉄(III)はほとんど結合を阻害しなかった. 塩化第一鉄(II)の結合阻害効果は, 他の鉄含有化合物の場合と同様に, ポリアミンアゴニストであるスペルミジンの添加により減弱された. また, 塩化第一鉄(II)よる阻害は鉄イオンのキレーターであるo-フェナントロリンおよびデフェロキサミンの添加によりそれぞれ濃度依存的に抑制されたが, 他の鉄含有化合物の阻害作用にはこれらの鉄キレーターは著明な影響を与えなかった. 以上の結果より, 二価鉄イオンはNMDAチャネル開放を調節する作用を持つ可能性が示唆される.
ISSN:0015-5691