モルヒネ耐性・依存形成と一本鎖CRE結合蛋白質

モルヒネ反復投与による耐性・依存形成のメカニズムは不明であるが, その形成機序の解明は脳の重要な機能である記憶・学習などにも結びつくと考えられる. 近年, 様々なエレメントが遺伝子DNA配列上に存在し, これらのエレメントに種々の蛋白質が結合し遺伝子発現を調節していることなどが明らかとなっている. エレメントには, CRE(Cyclic AMP Response Element)と呼ばれるDNA配列などもある. モルヒネの作用の一つにG蛋白質であるGiを介したcyclic AMP系の刺激伝達経路があげられる. 我々は, CREのDNAなどをプローブとし, 核抽出物との結合活性をゲルシフトアッセ...

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Veröffentlicht in:日本薬理学雑誌 1997, Vol.109 (2), p.1041-1041
Hauptverfasser: 郭哲輝, 大杉武, 丁云, 都銀珠, 三木直正
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:モルヒネ反復投与による耐性・依存形成のメカニズムは不明であるが, その形成機序の解明は脳の重要な機能である記憶・学習などにも結びつくと考えられる. 近年, 様々なエレメントが遺伝子DNA配列上に存在し, これらのエレメントに種々の蛋白質が結合し遺伝子発現を調節していることなどが明らかとなっている. エレメントには, CRE(Cyclic AMP Response Element)と呼ばれるDNA配列などもある. モルヒネの作用の一つにG蛋白質であるGiを介したcyclic AMP系の刺激伝達経路があげられる. 我々は, CREのDNAなどをプローブとし, 核抽出物との結合活性をゲルシフトアッセイ法で調べた. 種々の実験から, 一本鎖CRE DNAと核抽出物との結合活性がモルヒネ反復処理マウスの小脳で著しく低下していることを見いだした. この現象は, 神経芽細胞腫のNG108細胞でも認められる. マウス小脳より一本鎖CRE結合蛋白の精製を行い, 約40kDaの本蛋白質フラグメントのアミノ酸配列の決定を行った. 合成ヌクレオチドを用いたcDNAのクローニングなどから, 本蛋白がDNA複製に関与するPur α蛋白質(プリンに富んだ一本鎖DNAを認識する)と同じであることがわかった. Pur αがミエリン塩基性蛋白の遺伝子発現に, また進行性多巣性白質脳症に関与している可能性なども報告されている. 我々は, 1)321残基よりなるPur αの一本鎖CREへの結合ドメインが, 50-215残基に存在すること, 2)ノーザンハイブリゼーションからPur α mRNAが脳に多く存在すること, 3)抗体を用いた組織化学などからPur αが神経やグリア細胞の核にも局在していること, 4)Pur αの一本鎖CREへの結合がカゼインで増強されること, 生体内にもカゼイン様蛋白が存在する可能性などについて現在検討を行っており, これらの結果を紹介したい.
ISSN:0015-5691