ドコサヘキサエン酸長期投与によるラット脳神経細胞膜及び脳循環系への影響
ドコサヘキサエン酸(DHA)は, n=3系不飽和脂肪酸に属し, その代謝は遅く脳神経組織にも存在する. 脳神経系機能改善作用の他に心筋梗塞予防効果や血栓形成抑制作用などが知られている(Thromb. Res. , 53, 467(1989), Proc. Nat. Acad. Sci., 83, 4021(1986). 一方, 脳虚血や脳卒中などによる脳神経細胞の損傷原因として, 細胞膜の流動性低下による脆弱化や血液粘度の上昇による脳循環の悪化などが挙げられる. 今回高純度に精製したDHAをラットに投与し, 脳神経細胞膜の流動性及び脳血液粘度への影響を検討した. Wistar系雄性ラットにDH...
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Veröffentlicht in: | 日本薬理学雑誌 1996, Vol.107 (2), p.106-106 |
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Hauptverfasser: | , , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | ドコサヘキサエン酸(DHA)は, n=3系不飽和脂肪酸に属し, その代謝は遅く脳神経組織にも存在する. 脳神経系機能改善作用の他に心筋梗塞予防効果や血栓形成抑制作用などが知られている(Thromb. Res. , 53, 467(1989), Proc. Nat. Acad. Sci., 83, 4021(1986). 一方, 脳虚血や脳卒中などによる脳神経細胞の損傷原因として, 細胞膜の流動性低下による脆弱化や血液粘度の上昇による脳循環の悪化などが挙げられる. 今回高純度に精製したDHAをラットに投与し, 脳神経細胞膜の流動性及び脳血液粘度への影響を検討した. Wistar系雄性ラットにDHA(0, 100, 300mg/Kg)を8週間経口投与し, 常法により4血管閉鎖による30分間全脳虚血の1時間後に再潅流を試みた. DHA反復投与による体重は対照群との間に差異は見られなかった. 大脳皮質の神経細胞膜流動性は, 虚血再潅流による有為な低下は見られず, またDHAもこの現象に影響を与えていなかった. しかし, 対照群ラット海馬において虚血再潅流により流動性の低下を見た. さらにDHA投与ラットにおいては, 非虚血時の膜流動性には影響を与えていなかったが, 虚血再潅流による流動性低下を抑制した. 同様の結果は4週間の投与ラットにおいても得られた. 神経膜の流動性が膜構成脂肪酸不飽和度に依ることから, DHAの作用は, 再潅流による過酸化反応過程の抑制を示唆している. 次に, 血液粘度について検討するためにWistar系ラットに摂餌量を調節しながら, 同量のDHAを飼料に混合し8週間与えた. 本実験では両側総頚動脈結紮1時間後の再潅流を行った. 採血した総頚静脈血の粘度は虚血により上昇したが, DHA摂取ラットでは有意に抑制した. また脳虚血にヘマトクリット値の上昇が見られるが, この上昇を抑制した. 以上の結果は, DHAが脳神経細胞膜流動性のみならず, 血液粘性を反映する赤血球の変形能にも大きな影響を与える事を示唆し, 脳虚血時の脳循環や機能の改善作用が推測される. |
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ISSN: | 0015-5691 |