マウス肥満細胞株P815の腹腔培養による分化誘導機構
マウス肥満細胞株P815を同系マウスであるBDF1の腹腔で培養すると腫瘍性に増殖すると同時に, 細胞のヒスタミン含量が増加することが知られている. 我々は, このとき腹腔内でP815が分化しているのではないかと考え, 種々の肥満細胞の分化マーカーの発現を調べた. また, 分化のメカニズムについても検討した. P815を1週間腹腔で培養すると, 細胞のヒスタミン含量およびヒスタミン合成酵素であるヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)の活性は共に増加し, HDCmRNAの増加も認めた. さらに, 結合織型肥満細胞に特異的なマウス肥満細胞プロテアーゼ6(MMCP6)のmRNAも増加した. 以上から, P81...
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Format: | Tagungsbericht |
Sprache: | jpn |
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Zusammenfassung: | マウス肥満細胞株P815を同系マウスであるBDF1の腹腔で培養すると腫瘍性に増殖すると同時に, 細胞のヒスタミン含量が増加することが知られている. 我々は, このとき腹腔内でP815が分化しているのではないかと考え, 種々の肥満細胞の分化マーカーの発現を調べた. また, 分化のメカニズムについても検討した. P815を1週間腹腔で培養すると, 細胞のヒスタミン含量およびヒスタミン合成酵素であるヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)の活性は共に増加し, HDCmRNAの増加も認めた. さらに, 結合織型肥満細胞に特異的なマウス肥満細胞プロテアーゼ6(MMCP6)のmRNAも増加した. 以上から, P815は, 腹腔内で分化したと考えられる. 次にこのような腹腔内での分化になんらかの転写因子が関与していると予想し, いくつかの血球系転写因子の発現を調べてみた. 調べたもののうちNF-E2のサブユニットであるp45とmaf Kの発現が減少していた. 赤血球系の転写因子であるNF-E2が, 肥満細胞の分化にも関与している可能性があり興味深い. 腹腔から採取した細胞の上清を, 通常の培養液中に加えて培養すると4日後にHDCmRNAの発現が認められた. また, 腹腔で分化したP815を通常培養液中に戻すとHDCmRNAの発現が減少した. これらの結果から, 腹腔内での分化を誘導している因子は液性因子であり, また腹腔内での変化は可逆的であることが考えられた. この系では, 培養細胞を用いているので均一で大量に細胞を扱うことが可能であり, 分化のモデルとして有用である. |
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ISSN: | 0015-5691 |