シナプス活動によって発現が制御されるZn2+フィンガー転写因子Egr3

海馬, 小脳, 大脳皮質などの脳の神経細胞は, シナプス活動に応じて可塑的に変化することが知られている. このシナプス活動依存性の神経の可塑性は記憶や学習などの脳の高次機能の素子過程と考えられている. そして記憶の長期的保持(LTPの後期相)にはシナプス結合の変化すなわち遺伝子発現の変化が生じていると考えられる. そこで我々はシナプス活動による遺伝子発現の変化を明らかにするために, ラットを電気ショックした後に海馬で急速に誘導される遺伝子群をSubtractionさらにDifferential hybridizationによって単離した. 最も高頻度に単離されたクローン#16の塩基配列を解析し...

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Hauptverfasser: 山形要人, 入江康至, 香川尚己, 三木直正
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:海馬, 小脳, 大脳皮質などの脳の神経細胞は, シナプス活動に応じて可塑的に変化することが知られている. このシナプス活動依存性の神経の可塑性は記憶や学習などの脳の高次機能の素子過程と考えられている. そして記憶の長期的保持(LTPの後期相)にはシナプス結合の変化すなわち遺伝子発現の変化が生じていると考えられる. そこで我々はシナプス活動による遺伝子発現の変化を明らかにするために, ラットを電気ショックした後に海馬で急速に誘導される遺伝子群をSubtractionさらにDifferential hybridizationによって単離した. 最も高頻度に単離されたクローン#16の塩基配列を解析したところ, この遺伝子が3個の亜鉛フィンガーを持つ転写因子Egr3をコードすることがわかった. Egr3はZif268と同じファミリーに属し, 同じDNA配列に結合するが, 電気ショック後のmRNA誘導はZif268より長く続く. またZif268と同様, LTPの閾値刺激でも誘導され, TTXによって発現量が減少することから, グルタミン酸受容体を介する神経活動によって発現が調節されることが明らかになった. またコカインによるドーパミンニューロン刺激によっても線条体, 側座核で誘導されることから, この遺伝子が中枢神経系でシナプス活動によって広範に調節される可塑性遺伝子の一つで, Zif268とともに標的遺伝子の発現を調節すると考えられた.
ISSN:0015-5691