マウス唾液腺に及ぼす PCB の影響

Polychlorinated biphenyl(PCB)が生体内に摂取されると, 全身的に多彩な症状を呈するいわゆるカネミ油症が発現する. 口腔領域では唾液腺を中心とした症状が臨床上認められるが, PCB の唾液腺への影響に関しては不明の点が多い. そこで今回我々はマウス耳下腺に及ぼす PCB の影響について, 電顕観察と生化学的検索を行い, それぞれの経時的変化の対応関係を検討した. 実験には, 4週齢雄性 ddyマウス(1群 7匹)に PCB(KC-400)を 0.2mg/kg, 2mg/kg, 20mg/kg の投与量で各々腹腔内投与した. 一定期間後に屠殺し, 潅流固定後耳下腺を摘出...

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Veröffentlicht in:日本薬理学雑誌 1995, Vol.105 (2), p.171-171
Hauptverfasser: 川崎五郎, 俣木志朗, 水野明夫, 加藤有三
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:Polychlorinated biphenyl(PCB)が生体内に摂取されると, 全身的に多彩な症状を呈するいわゆるカネミ油症が発現する. 口腔領域では唾液腺を中心とした症状が臨床上認められるが, PCB の唾液腺への影響に関しては不明の点が多い. そこで今回我々はマウス耳下腺に及ぼす PCB の影響について, 電顕観察と生化学的検索を行い, それぞれの経時的変化の対応関係を検討した. 実験には, 4週齢雄性 ddyマウス(1群 7匹)に PCB(KC-400)を 0.2mg/kg, 2mg/kg, 20mg/kg の投与量で各々腹腔内投与した. 一定期間後に屠殺し, 潅流固定後耳下腺を摘出して通法に従い電顕試料を作製した. 電顕による形態観察では, PCB 2mg/kg 投与群において投与後 7日迄に, 分泌顆粒の形態変化, 糖蛋白合成系異常, 細胞内空胞変性が認められた. 生化学的検索では, 投与後 4日目にカテプシン群をはじめとするリソソーム系酵素が著明に増加した. この変化は, 細泡内の空胞変性の前に認められることから, カテプシン群の酵素活性上昇と空胞変性との関連性が示唆された. また, 投与後 7日目に耳下腺内のビタミンA が著明に減少した. この結果は分泌顆粒の形態変化, 糖蛋白合成系の異常を反映するものと推測された. さらにこのビタミンA の減少に先行して, 耳下腺における薬物代謝酵素の誘導が確認された. この結果は, 従来報告されている肝臓などと同様に, 耳下腺においても PCB投与によって薬物代謝酵素が誘導され, その結果としてビタミンA が減少することを示唆している. 以上の実験結果より, PCB投与により観察される耳下腺の形態的変化には, リソソーム系酵素の活性上昇およびビタミンA の減少が密接に関与していることが推測された.
ISSN:0015-5691