麻酔イヌを用いた冠動脈閉塞による心筋細胞外K^+ 濃度, pH及び活動電位の変化

心筋は, 虚血によって細胞外K^+ 濃度が増加し, H^+ が産生されアシドーシスとなる. これら2つのイオンの変化は, 心筋活動電位持続時間(APD)に対してアシドーシスは延長に, 細胞外K^+ 濃度増加は短縮にそれぞれ働くとされている. しかしながら, これらの報告の多くはin vitroの結果であり, 実際にin vivoの虚血時のAPDに対してこれら2つのイオンの作用がどの程度反映しているかどうか十分に明らかではない. そこで, 今回我々は, 麻酔イヌを用い心筋細胞外K^+ , H^+ 濃度及びAPDを同時測定し, 虚血時における各イオン及びAPDの変化とKCl静脈内投与時の変化を比較...

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Hauptverfasser: 濱田香理, 山崎純, 長尾拓
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:心筋は, 虚血によって細胞外K^+ 濃度が増加し, H^+ が産生されアシドーシスとなる. これら2つのイオンの変化は, 心筋活動電位持続時間(APD)に対してアシドーシスは延長に, 細胞外K^+ 濃度増加は短縮にそれぞれ働くとされている. しかしながら, これらの報告の多くはin vitroの結果であり, 実際にin vivoの虚血時のAPDに対してこれら2つのイオンの作用がどの程度反映しているかどうか十分に明らかではない. そこで, 今回我々は, 麻酔イヌを用い心筋細胞外K^+ , H^+ 濃度及びAPDを同時測定し, 虚血時における各イオン及びAPDの変化とKCl静脈内投与時の変化を比較した. また虚血による細胞外K^+ 濃度上昇に対するATP感受性K^+ channelの関与を検討した. (方法)雑種成犬(12-20kg)を用いペントバルビタール・ナトリウム(30mg/kg,i.v.)にて麻酔し,左冠動脈前下行枝(LAD)の起始部から第一分枝の間を剥離し結紮部位とした.K^+ 及びH^+ 感受性電極を一対とし,心外膜側より深さ4.5mmの部位を測定した.また吸引電極を用いてその部位の心外膜側のAPD(60%及び90%再分極)を測定した.これらの測定は3箇所において行なった.心筋虚血はLADを5分間完全閉塞することによって行なった.KCI(10mg/kg/min)は大腿静脈より5分間持続投与した. glyburide(1.0mg/kg)は,虚血10分前に静脈内投与した. (結果及び考察)虚血5分後で心筋細胞K^+ 濃度は3.28±0.08から5.50±0.60(mM)に増加し,心筋細胞外pHは7.40±0.05から7.29±0.09に低下した.この時,APDは虚血に伴って短縮した(APD60%で142±6から106±17(msec),n=5).また,glyburideの前処置は,虚血による細胞外K^+ 濃度上昇を抑制し(6.39±1.04から4.61±0.48(mM),虚血5分値),この時APDの短縮も抑制した(92±12から123±9(msec),n=4).一方,KCI静脈内投与は心筋細胞pHの変化を伴わずに心筋細胞外K^+ 濃度を,3.06±0.25から5.64±0.86(mM)まで増加させ,またAPDを154±11から118±5(msec)に短縮した(n=6).以上のことより,in vivoにおいて虚血初期におけるAPDは,心筋細胞外K^+ 濃度の増加によって短縮し,またこの心筋細胞外K^+ 濃度の増加は,一部ATP感受性K^+ channelが関与していることが示された.
ISSN:0015-5691