肺胞 II型上皮細胞からの肺表面活性物質分泌に対する麦門冬湯の作用
【目的】麦門冬湯は喀出し難い粘稠な痰を伴う咳に対して有効な漢方製剤である. 我々は先に, 麦門冬湯が既存の合成鎮咳薬と異なり新規の機序による末梢性鎮咳作用を持つこと, さらに, 肺表面活性物質(PS)の分泌促進作用を持つことを発表した. 今回は, PSの分泌に対する麦門冬湯の各抽出分画の作用およびその作用機序を初代培養肺胞 II型上皮細胞を用いて既知の分泌促進物質と比較検討した. 【方法】ラット肺胞 II型上皮細胞の単離, 培養および PS分泌の評価は既報の方法により行なった. 麦門冬湯はエキス粉末を 10%の濃度で精製水に懸濁後, 濾過したものを濾液分画とした. さらにこの濾液から疎水クロマ...
Gespeichert in:
Veröffentlicht in: | 日本薬理学雑誌 1994, Vol.103 (2), p.133-133 |
---|---|
Hauptverfasser: | , , , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
Tags: |
Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
|
Zusammenfassung: | 【目的】麦門冬湯は喀出し難い粘稠な痰を伴う咳に対して有効な漢方製剤である. 我々は先に, 麦門冬湯が既存の合成鎮咳薬と異なり新規の機序による末梢性鎮咳作用を持つこと, さらに, 肺表面活性物質(PS)の分泌促進作用を持つことを発表した. 今回は, PSの分泌に対する麦門冬湯の各抽出分画の作用およびその作用機序を初代培養肺胞 II型上皮細胞を用いて既知の分泌促進物質と比較検討した. 【方法】ラット肺胞 II型上皮細胞の単離, 培養および PS分泌の評価は既報の方法により行なった. 麦門冬湯はエキス粉末を 10%の濃度で精製水に懸濁後, 濾過したものを濾液分画とした. さらにこの濾液から疎水クロマト MCI Gel CHP 20P を用いて水溶出分画および 50%アセトン溶出分画を得た. 【結果および結論】麦門冬湯濾液分画は 0.1-10μg/ml の濃度で用量依存的に PS分泌を促進した. この分泌促進活性は 50%アセトン溶出分画に認められた. 50%アセトン溶出分画は, 細胞内 cyclic AMP量を上昇させたが, その程度はβ-作動薬 terbutaline より小さかった. また, 細胞内 Ca^2+ 濃度も上昇させたが, その程度も P_2 受容体作動薬 ATP より小さかった. 50%アセトン溶出分画は protein kinase A 阻害薬 H-89, および細胞内 Ca^2+ キレート剤 BAPTA-AM のいずれによってもほぼ完全に抑制された. 以上の成績より麦門冬湯の分泌促進作用には, 細胞内 cyclic AMP および Ca^2+ の両者が少なくとも一部関与し, この漢方製剤が既存の分泌促進物質とは異なる複合的機序により作用を発現していることが示唆された. これらの成績は, 種々の物質を含む漢方製剤の薬効薬理を解明する上で有用な基礎データとなるものと考えられる. |
---|---|
ISSN: | 0015-5691 |