アントラサイクリン系制癌剤の作用発現におけるラジカル産生と DNAインターカレーションの意義

演者らは, アントラサイクリン系制癌剤のアドリアマイシン(ADM)の制癌作用は, ADM の DNA へのインターカレーションによって発現し, 臓器等の分化細胞での毒作用は, 主にミトコンドリアでの ADM によるラジカル産生に基づくことを示唆してきた. 今回は, 上記の概説を確認するために, ADM と比べて有効作用がより強く, 心毒性が弱いアントラサイクリン系制癌剤のピラルビシン(THP)を用いて, 未分化細胞と分化細胞に対する作用について ADM と比較検討した. 癌細胞のマウスリンパ性白血病細胞 L1210 および正常細胞のブタ腎上皮株化細胞 LLC-PK1 の増殖抑制作用や L121...

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Veröffentlicht in:日本薬理学雑誌 1994, Vol.103 (2), p.108-108
Hauptverfasser: 佐藤淳, 角崎英志, 清宮健一, 松尾三郎, 暮部勝
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:演者らは, アントラサイクリン系制癌剤のアドリアマイシン(ADM)の制癌作用は, ADM の DNA へのインターカレーションによって発現し, 臓器等の分化細胞での毒作用は, 主にミトコンドリアでの ADM によるラジカル産生に基づくことを示唆してきた. 今回は, 上記の概説を確認するために, ADM と比べて有効作用がより強く, 心毒性が弱いアントラサイクリン系制癌剤のピラルビシン(THP)を用いて, 未分化細胞と分化細胞に対する作用について ADM と比較検討した. 癌細胞のマウスリンパ性白血病細胞 L1210 および正常細胞のブタ腎上皮株化細胞 LLC-PK1 の増殖抑制作用や L1210細胞DNA への[^^3 H]thymidine 取り込み抑制作用は, THP で ADM よりも約5~8倍強く発現した. Confluent の LLC-PK1細胞に対する LDH遊離作用は ADM と比べて THP で若干強く発現するのみであった. 上記の細胞およびラット心臓から調整したミトコンドリア画分における ADM もしくは THP のスーパーオキシドアニオン産生は, THP と比べて ADM の方が高く, 心臓≧LLC-PK1>L1210 の順で顕著に発現した. 以上の結果から, THP は ADM よりも DNAインターカレート能が高いことから, 未分化細胞や分化細胞で細胞静止作用がより強く発現するが, 分化細胞におけるミトコンドリアでのラジカル産生が低いために, 分化細胞での細胞障害作用は比較的弱く発現するものと考えられる. 特に, ミトコンドリアでのラジカル産生能の高い心臓では ADM の毒性が強く発現すると示唆される.
ISSN:0015-5691