ラット脳シナプス小胞とシナプス膜との融合に対するアラキドン酸の促進効果

神経伝達物質放出の小胞仮説に従えば, シナプス小胞(SV)とシナプス膜(SM)との融合は, 神経伝達物質放出過程の重要な1段階である. 当研究室においてarachidonic acid(AA)あるいはその代謝産物が回腸腸筋神経叢からのACh放出を促進することを見い出している. そこでSVとSMとの融合に対するAAの効果を検討した. ラット脳精製シナプトソームからSVおよびSMをそれぞれ分画採取し, SVは蛍光プローブoctadecyl rhodamine B(R_18 )であらかじめ標識しておき, 一方SMは市販のphospholipase A_2 (PLA_2 , ブタ膵)で処置し, 洗浄後...

Ausführliche Beschreibung

Gespeichert in:
Bibliographische Detailangaben
Hauptverfasser: 西尾英明, 矢ヶ崎修
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
Tags: Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
Beschreibung
Zusammenfassung:神経伝達物質放出の小胞仮説に従えば, シナプス小胞(SV)とシナプス膜(SM)との融合は, 神経伝達物質放出過程の重要な1段階である. 当研究室においてarachidonic acid(AA)あるいはその代謝産物が回腸腸筋神経叢からのACh放出を促進することを見い出している. そこでSVとSMとの融合に対するAAの効果を検討した. ラット脳精製シナプトソームからSVおよびSMをそれぞれ分画採取し, SVは蛍光プローブoctadecyl rhodamine B(R_18 )であらかじめ標識しておき, 一方SMは市販のphospholipase A_2 (PLA_2 , ブタ膵)で処置し, 洗浄後, 融合実験に用いた. 融合測定はキュベット内にR_18 標識SVを入れ, 励起560nm, 発光590nm, 37℃, 撹拌下に蛍光を経時的に測定しつつ一定時間後にPLA_2 処置SMを添加し, その際の蛍光発光増大により検出した. PLA_2 処置SMはR_18 標識SV蛍光の増大を速やかに起こしその増大は処置PLA_2 量, 処置時間あるいはキュベット添加SM量に依存して生じたが, PLA_2 無処置あるいはCa^2+ free条件下でのPLA_2処置SMは蛍光増大を全く引き起こさなかった. PLA_2 阻害薬のquinacrineや脂肪酸吸着物質のalbumin存在下のPLA_2 処置では, そのSMによる蛍光増大は減弱した. 一方, PLA_2処置時のAA添加はSMの蛍光増大能を高めると共にalbuminによる抑制をキャンセルした. しかしAAのみ(PLA_2 free)をSMに添加したのでは少しの蛍光増大にとどまった. lysophosphatidylcholineにはAAのような効果はなかった. SMはPLA_2 の作用を受けてSVとの融合能を持つようになり, AAがそれを亢進すると考えられる結果を得た.
ISSN:0015-5691