中枢M_1 アセチルコリン受容体の学習・記憶への関与に関する行動薬理学的研究
脳内アセチルコリン(ACh)神経系は大脳皮質, 海馬, 線条体など高次機能を統御する部位に投身している. 電気的あるいはコリンマスタード等の薬物によるACh 投射系の破壊が学習あるいは記憶障害を誘引することより学習・記憶におけるAChの役割が注目されている. また, ムスカリン性アセチルコリン(mACh)受容体は主として, M_1 とM_2 のサブタイプに分類され, ピレンゼピン, AF-DX 116 はそれぞれの選択的アンタゴニストとして知られている. 今回, mACh受容体サブタイプの学習, 記憶への関与を解明するため, マウス受動的回避反応実験法によりピレンゼピン, AFDX 116の学...
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Veröffentlicht in: | 日本薬理学雑誌 1989, Vol.94 (5), p.347-347 |
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Hauptverfasser: | , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 脳内アセチルコリン(ACh)神経系は大脳皮質, 海馬, 線条体など高次機能を統御する部位に投身している. 電気的あるいはコリンマスタード等の薬物によるACh 投射系の破壊が学習あるいは記憶障害を誘引することより学習・記憶におけるAChの役割が注目されている. また, ムスカリン性アセチルコリン(mACh)受容体は主として, M_1 とM_2 のサブタイプに分類され, ピレンゼピン, AF-DX 116 はそれぞれの選択的アンタゴニストとして知られている. 今回, mACh受容体サブタイプの学習, 記憶への関与を解明するため, マウス受動的回避反応実験法によりピレンゼピン, AFDX 116の学習, 記憶への影響を検討した. 「方法」雄性 ddY系マウス(7-8週齢)を用いた. マウスをstep through型受動的回避反応実験装置の明室に入れた後, 四肢が暗室に入った瞬間に床グリッドより0.5 mAの電気刺激を与えた. この際, マウスが暗室に入るまでの時間を反応潜時として測定した. 電気刺激を与えた後マウスを実験箱から取り出し 1分後に再度明室に入れた. 300秒の反応潜時基準値を達成するまで同様の試験を繰り返した(獲得試行). 24時間後, 7日後ないし14日後の同時刻にマウスを明室に入れ暗室に入るまでの反応潜時を測定した(再生試行). なお, 各薬物は1μl を脳室内投与した. 「結果および考察」(1)アトロピン, ピレンゼピンおよびAF-DX 116 の獲得試行前投与は, 基準潜時達成に要する試行回数の若干の増加をもたらした. (2)獲得試行前の1 nmolアトロピン投与は対照群に比し, 再生試行における反応潜時を有意に短縮した. 同程度の短縮が40 nmol ピレンゼピン投与群に認められた. (3)獲得試行において, 基準潜時達成直後に40 nmol アトロピンを投与しても再生試行における反応潜時には影響しなかった. (4)獲得試行において基準潜時を達成したマウスについて, 14日後, 再生試行5分前に20 nmol の各薬物を投与しても反応潜時に影響はなかった. 以上の結果より, 脳内mACh受容体, 特にM_1 サブタイプが記憶形成の初期段階において重要であることが示唆された. |
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ISSN: | 0015-5691 |