ラット大脳皮質切片における低グルコース, 低酸素の作用
老人性痴呆の発症要因の一つとして, 脳血管障害に伴う低酸素, 低グルコース状態による中枢神経細胞の機能低下あるいは細胞脱落が挙げられる. 本実験においては低酸素, 低グルコースの状態を容易に再現できる脳切片法を用いて, 細胞機能の低下過程を電気生理学的に比較検討した. Wistar系ラット(約150g)の大脳皮質体性感覚野から脳表に垂直な厚さ約450μmの切片を作製し, 白質の電気刺激による応答を, 灰白質第2, 3層から細胞外, 細胞内電極にて記録し, この電位変化に対する低グルコース(0-5 mM), 低酸素(0-25% pO_2 )の影響を観察した. 白質刺激による細胞外電場電位は入力線...
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Veröffentlicht in: | 日本薬理学雑誌 1987, Vol.90 (6), p.381-381 |
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Hauptverfasser: | , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 老人性痴呆の発症要因の一つとして, 脳血管障害に伴う低酸素, 低グルコース状態による中枢神経細胞の機能低下あるいは細胞脱落が挙げられる. 本実験においては低酸素, 低グルコースの状態を容易に再現できる脳切片法を用いて, 細胞機能の低下過程を電気生理学的に比較検討した. Wistar系ラット(約150g)の大脳皮質体性感覚野から脳表に垂直な厚さ約450μmの切片を作製し, 白質の電気刺激による応答を, 灰白質第2, 3層から細胞外, 細胞内電極にて記録し, この電位変化に対する低グルコース(0-5 mM), 低酸素(0-25% pO_2 )の影響を観察した. 白質刺激による細胞外電場電位は入力線維からと思われる時間経過の短い電位と, それに続く1, 2個のpopulation spike(PS)が見られ, 細胞内記録ではPSに同期する活動電位とIPSPが記録できた. PSの減少は低酸素条件下ては直に始まり, 低グルコースでは約5分後から始まる. PS消失時間はこれらの濃度に依存し, 神経の活性を抑えるpentobarbital, GABA系物質は消失までの時間を延長し, 逆に活性を高める物質(pentetrazol,bicuculline)は短縮した. 今回の成績は低酸素, 低グルコースによる細胞機能低下過程には明らかな差があることを示唆している. |
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ISSN: | 0015-5691 |