サルの無麻酔下における網膜電図記録法と二,三の薬物の影響

カニクイザルの網膜電図(electroretinogram,ERG)を無麻酔下に記録するため,モンキーチェア,頭部固定装置およびコンタクトレンズ型電極を考案した.サルをシールドルーム内で暗順応させた後,光刺激を与えると,刺激直後に生じる陰性の電位変動から成るa波とそれに続く陽性のb波および緩徐に出現する陽性のc波から成るERGが記録され,さらにb波の立上り時に律動様小波が認められた.無麻酔下ではa波およびb波は明確に記録できたが,c波は眼球の動き等によるartifactがしばしば混入した.なお,麻酔下ではc波も明確に記録された.a波およびb波測定の至適条件は暗順応30分後,光刺激強度2joul...

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Veröffentlicht in:日本薬理学雑誌 1980, Vol.76(7), pp.581-594
Hauptverfasser: 佐藤, 宏, 福田, 尚久, 栗木, 久, 牧, 良孝, 野村, 正治, 佐治, 美昭, 名川, 雄児
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:カニクイザルの網膜電図(electroretinogram,ERG)を無麻酔下に記録するため,モンキーチェア,頭部固定装置およびコンタクトレンズ型電極を考案した.サルをシールドルーム内で暗順応させた後,光刺激を与えると,刺激直後に生じる陰性の電位変動から成るa波とそれに続く陽性のb波および緩徐に出現する陽性のc波から成るERGが記録され,さらにb波の立上り時に律動様小波が認められた.無麻酔下ではa波およびb波は明確に記録できたが,c波は眼球の動き等によるartifactがしばしば混入した.なお,麻酔下ではc波も明確に記録された.a波およびb波測定の至適条件は暗順応30分後,光刺激強度2joule,記録時定数0.1secであった.この条件下に8頭のサルで記録したERGのa波およびb波のピーク潜時はそれぞれ17.3±0.5,53.5±3.2msecであり,振幅はそれぞれ163.3±44.9,437.0±37.9μVであった.このERGは6週間の長期反復測定で25%以内の変動幅で安定して測定することができた.一方,ERGは麻酔の影響を受け,pentobarbital麻酔下ではb波の振幅増大,ketamine麻酔下では,逆にb波の振幅減少が認められた.a波はいずれの麻酔下でも著変を認めなかった.代表的網膜毒,1,5-di(p-aminophenoxy)pentane(200mg/kg/day,3日間経口投与)により,ERGのa波とb波はともに完全に消失し,視覚野誘発電位も消失した.同時に瞳孔散大,視覚障害様症状が認められ,また病理組織学的には顕著な網膜障害像が確認された.以上の成績より,本方法は無麻酔下にサルのERGを容易に,かつ安定して記録できる方法であり,また薬物のサル視覚毒性を検索するための有用な方法であると考えられる.
ISSN:0015-5691
1347-8397
DOI:10.1254/fpj.76.581