後頭動脈—頭蓋外椎骨動脈吻合術を施行し周術期脳虚血を予防しえた1例
後方循環系の直接血行再建術例は比較的少ない.その中でも,頭蓋外椎骨動脈をrecipientとするものは非常に稀である.今回,症候性頭蓋内血管狭窄病変を有する患者において,頚椎後方固定術を行う前に後頭動脈—頭蓋外椎骨動脈吻合(OA‒V3 bypass)術を施行し,周術期に新たな神経学的脱落所見を呈しなかった症例を経験したため報告する.30歳代男性,1年前より歩行中の右下肢の脱力を認めた.1ヶ月前より症状が増悪し,近医にて頭蓋頚椎移行部に異常所見を指摘され当院紹介となった.初診時,右下肢軽度麻痺および四肢腱反射亢進を認めた.頚椎Magnetic resonance imaging(MRI)のT2強...
Gespeichert in:
Veröffentlicht in: | NEUROSURGICAL EMERGENCY 2022, Vol.27(2), pp.122-129 |
---|---|
Hauptverfasser: | , , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Schlagworte: | |
Online-Zugang: | Volltext |
Tags: |
Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
|
Zusammenfassung: | 後方循環系の直接血行再建術例は比較的少ない.その中でも,頭蓋外椎骨動脈をrecipientとするものは非常に稀である.今回,症候性頭蓋内血管狭窄病変を有する患者において,頚椎後方固定術を行う前に後頭動脈—頭蓋外椎骨動脈吻合(OA‒V3 bypass)術を施行し,周術期に新たな神経学的脱落所見を呈しなかった症例を経験したため報告する.30歳代男性,1年前より歩行中の右下肢の脱力を認めた.1ヶ月前より症状が増悪し,近医にて頭蓋頚椎移行部に異常所見を指摘され当院紹介となった.初診時,右下肢軽度麻痺および四肢腱反射亢進を認めた.頚椎Magnetic resonance imaging(MRI)のT2強調画像にて頭蓋頚椎移行部からC2にかけて髄内高信号を認め,頚椎computed tomography(CT)にてos odontoideum(OO),atlanto occipital dislocation(AOD)およびatlantoaxial dislocation(AAD)を認めた.進行性の脊髄症を呈しており,頚椎後方固定術(C0‒C2固定)が必要と考えた.また,頭部magnetic resonance angiography(MRA)にて椎骨脳底動脈の狭窄と,頭部MRI T2強調画像にて両側小脳半球,左橋,および左視床に陳旧性脳梗塞を認めた.頭頚部CT angiographyにて左椎骨動脈が起始部より次第に狭小化し,C2高位で閉塞を認めた.血管撮影にて左深頚動脈が代償性に発達し,C2高位で左椎骨動脈と吻合していることを認めた.これらの所見から,頭蓋頚椎移行部の形成異常により頚椎症性脊髄症と脳循環不全を呈していると考えた.頚椎後方固定術の施行が必要であるが,脳循環不全に対し代償性に発達した頚部の筋層間を走行している側副血行路が手術操作に伴い閉塞し,周術期脳虚血を来す可能性が考えられたため,周術期脳虚血の予防を目的に,先行してOA‒V3 bypass術を行った.Bypassの開存を確認し,後日頚椎後方固定術を施行した.周術期には神経学的脱落所見を認めず経過し,独歩退院となった. |
---|---|
ISSN: | 1342-6214 2434-0561 |
DOI: | 10.24723/jsne.27.2_122 |