脳卒中急性期から慢性期までの一貫した歯科介入体制構築の試み

脳卒中患者における口腔内機能低下,口腔内環境悪化は肺炎等の合併により患者のADLや予後を悪化させる.これまで脳卒中患者に対する歯科介入は,急性期および慢性期の口腔ケア,嚥下機能評価とリハビリテーションにより肺炎予防や経口摂取率の向上等に寄与すると報告されている.しかし従来の歯科介入は各施設単位で散発的であり,転院に伴い連続性を失う問題点がある.当院は急性期より積極的な歯科介入をおこなうとともに,回復期,維持期においても連続したケアが維持できるよう周囲の医療機関との歯科連携に取り組んでおり,その効果と現状,問題点を脳卒中診療医の立場から報告する.院内においては入院直後より全例歯科介入をおこない,...

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Veröffentlicht in:NEUROSURGICAL EMERGENCY 2018, Vol.23(1), pp.10-16
Hauptverfasser: 稲次, 基希, 戸原, 玄, 古屋, 純一, 沼沢, 祥行, 三木, 一徳, 泉山, 肇, 水口, 俊介, 前原, 健寿
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:脳卒中患者における口腔内機能低下,口腔内環境悪化は肺炎等の合併により患者のADLや予後を悪化させる.これまで脳卒中患者に対する歯科介入は,急性期および慢性期の口腔ケア,嚥下機能評価とリハビリテーションにより肺炎予防や経口摂取率の向上等に寄与すると報告されている.しかし従来の歯科介入は各施設単位で散発的であり,転院に伴い連続性を失う問題点がある.当院は急性期より積極的な歯科介入をおこなうとともに,回復期,維持期においても連続したケアが維持できるよう周囲の医療機関との歯科連携に取り組んでおり,その効果と現状,問題点を脳卒中診療医の立場から報告する.院内においては入院直後より全例歯科介入をおこない,入院後3日以内に歯科医師による専門的口腔ケアを開始,必要に応じて義歯調整や抜歯をおこなった.また嚥下機能評価をあわせておこない,言語聴覚士と連携し早期の経口摂取に取り組んだ.さらに口腔ケアの均質化を図るために口腔ケアマニュアルを作成,勉強会を繰り返し,看護師でも毎日の口腔ケア維持を可能にした.近隣の回復期施設医師,歯科医師と連携し,評価方法,ケア方法の共通化を目指した人的交流を行うとともに,歯科情報に関する転院時の診療情報提供を強化した.維持期施設において歯科医師の介入は困難であることから,作成した口腔ケアマニュアルに基づいて,口腔ケア方法の指導を行った.急性期には肺炎発生率の減少を認めた.また回復期施設への連携により,困難であった歯科治療の継続も可能な症例がみられた.一方で当院のような都市型施設では患者の転院先が多岐にわたり,個別の病院間連携のみでは,歯科連続介入が可能な症例は限られた.脳卒中患者に対する積極的な歯科介入は,口腔衛生,口腔嚥下機能の観点から有用と思われた.一方各施設単独での努力による施設間連携には限界があり,全国的な医科歯科連携の継続は困難と思われる.リハビリテーションと同様に脳卒中パスへの反映や,診療報酬への反映などの制度的な取り組みが必要であると思われる.
ISSN:1342-6214
DOI:10.24723/jsne.23.1_10