嗅覚系脳神経回路の解明 : 鼻閉モデルマウスを用いた嗅入力遮断効果の解析
「抄録」 匂いの情報は嗅細胞軸索を介して, 嗅球表面の糸球体に入り投射ニューロンの樹状突起とシナプスし, さらに糸球体を構成する様々な神経化学物質を含有するニューロンによって調整される. 臨床の場において, 慢性副鼻腔炎や鼻茸等で長期間鼻が遮蔽されると症状改善後に嗅覚異常を認めることがある. また, げっ歯類の片鼻閉実験では, 糸球体近傍ニューロンのtyrosine hydroxylase(TH)の発現が低下・消失することが知られている. そこで本研究では, マウス及びTH発現をgreen fluorescent protein(GFP)でモニターした遺伝子改変マウス(TH-GFPマウス)を用...
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Veröffentlicht in: | 川崎医学会誌 2014, Vol.40 (2), p.67-75 |
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Hauptverfasser: | , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 「抄録」 匂いの情報は嗅細胞軸索を介して, 嗅球表面の糸球体に入り投射ニューロンの樹状突起とシナプスし, さらに糸球体を構成する様々な神経化学物質を含有するニューロンによって調整される. 臨床の場において, 慢性副鼻腔炎や鼻茸等で長期間鼻が遮蔽されると症状改善後に嗅覚異常を認めることがある. また, げっ歯類の片鼻閉実験では, 糸球体近傍ニューロンのtyrosine hydroxylase(TH)の発現が低下・消失することが知られている. そこで本研究では, マウス及びTH発現をgreen fluorescent protein(GFP)でモニターした遺伝子改変マウス(TH-GFPマウス)を用い, 機能的遮断を施したモデルマウスを作製し, 入力遮断によるその他の神経化学物質に対する影響を調べた. 方法は, 縫合によりマウスの左鼻腔を完全に鼻閉させ, 3週間~6ヶ月後に灌流固定し, 左右嗅球の連続スライス作製後各種抗体を用いて免疫染色を行った. その結果, これまでの報告と同様3週間の鼻閉モデルマウスでは, 鼻閉同側嗅球のTH発現が著しく低下しており, 左鼻腔の入力遮断がなされていたことが示された. また6ヶ月と長期の鼻閉モデルマウスでは, 鼻閉同側だけではなく対側嗅球でも著しいTH発現低下が確認された. TH-GFPマウスでは, THの発現が低下しているにもかかわらずGFP発現を維持する細胞が少数見られ, 野生型鼻閉モデルマウスでも同様にTH発現を維持するニューロンが稀に見られた. このようなTHニューロンは発現低下を示すものよりも比較的大きい細胞体を持つ傾向にあった. 以上の結果, THニューロンが示す入力遮断に対する反応の多様性は, THニューロンが入力刺激に対して異なる電気特性を生じるという我々の最近の研究結果を支持するものと考える. 今後, 多様性を示すTHニューロンが匂い入力調節にどのように関わるか解析を進めていきたい. |
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ISSN: | 0386-5924 |