大量出血を来した十二指腸憩室の一例―十二指腸憩室のX線的統計をまじえて

症例は75歳女性, 下血で当科に入院となった. 十二指腸造影で, 十二指腸水平部内側にニッシェを伴う約6×6cm大の憩室が認められた. その他の消化管検査で出血源を疑う病変はなく, 十二指腸憩室からの出血と診断された. 憩室切除術が施行され, 切除標本を組織学的検討したところ, 憩室壁には筋層のある部分とない部分が混在しており, 出血源と考えられるビランはその両者の境に多かった. これは, 筋層の有無による壁運動のひずみが出血を引き起こしたことを推測させた. また, 我々は当教室過去3年間, 1,881名の上部消化管造影検査における十二指腸憩室の頻度を調べ, 男性8.5%, 女性13.6%,...

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Veröffentlicht in:川崎医学会誌 1993, Vol.19 (4), p.407-412
Hauptverfasser: 細部雅代, 木原彊, 水野充, 武田昌治, 山内三枝, 鴨井隆一, 藤村宜憲, 星加和徳, 内田純一, 飯田三雄
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:症例は75歳女性, 下血で当科に入院となった. 十二指腸造影で, 十二指腸水平部内側にニッシェを伴う約6×6cm大の憩室が認められた. その他の消化管検査で出血源を疑う病変はなく, 十二指腸憩室からの出血と診断された. 憩室切除術が施行され, 切除標本を組織学的検討したところ, 憩室壁には筋層のある部分とない部分が混在しており, 出血源と考えられるビランはその両者の境に多かった. これは, 筋層の有無による壁運動のひずみが出血を引き起こしたことを推測させた. また, 我々は当教室過去3年間, 1,881名の上部消化管造影検査における十二指腸憩室の頻度を調べ, 男性8.5%, 女性13.6%, 全体平均10.7%という結果を得た. 年齢別頻度では, 男女ともに50歳代以上において, 高齢になるに従いその頻度は増し, 特に60歳代以上は著明な増加を示した. 「はじめに」十二指腸憩室は臨床で頻繁に見るものであり, 剖検例では129例中31.8%に認めた1)という報告がある. 十二指腸憩室のほとんどは無症状であるが, 稀に重篤な合併症を来すことがある. 我々は大量出血を来した十二指腸水平部憩室症の一例を経験, 低緊張性十二指腸造影より術前にこの憩室からの出血を強く疑い, 手術を行い出血病巣を組織学的に検討したので, 当教室過去3年間における十二指腸憩室のX線的頻度と共に報告する.
ISSN:0386-5924