頭蓋内胚細胞性腫瘍における細胞周期制御因子の発現とその遺伝子異常の解析

頭蓋内胚細胞性腫瘍は, 組織学的には, 精巣胚細胞性腫瘍と極めて類似している. 精巣胚細胞性腫瘍における分子生物学的背景としてp53およびmdm2(murine double minute2)の異常が報告されているが, 頭蓋内胚細胞性腫瘍における, p53, mdm2に関しては未だ解明されていない. 本研究では, 頭蓋内胚細胞性腫瘍の腫瘍化のメカニズムを明らかにするために, p53遺伝子変異, mdm2遺伝子増幅, INK4a/ARF(inhibitor of cyclin dependent kinase 4a/alterative reading frame)遺伝子異常を蛍光1本鎖DNA高...

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Veröffentlicht in:金沢大学十全医学会雑誌 2000-02, Vol.109 (1), p.48-59
1. Verfasser: 岩戸雅之
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:頭蓋内胚細胞性腫瘍は, 組織学的には, 精巣胚細胞性腫瘍と極めて類似している. 精巣胚細胞性腫瘍における分子生物学的背景としてp53およびmdm2(murine double minute2)の異常が報告されているが, 頭蓋内胚細胞性腫瘍における, p53, mdm2に関しては未だ解明されていない. 本研究では, 頭蓋内胚細胞性腫瘍の腫瘍化のメカニズムを明らかにするために, p53遺伝子変異, mdm2遺伝子増幅, INK4a/ARF(inhibitor of cyclin dependent kinase 4a/alterative reading frame)遺伝子異常を蛍光1本鎖DNA高次構造多型PCR法, 弁別的PCR法および直接シークエンス法を用いて検討した. さらに, p53蛋白およびmdm2蛋白の発現を免疫組織化学的に検討した. 手術標本より得られた頭蓋内胚細胞性腫瘍21例(胚細胞腫10例, 奇形腫7例, 卵黄嚢腫瘍2例, 絨毛癌2例)を対象とした. 21例中1例においてp53遺伝子エクソン5に点突然変異を認めた. mdm2遺伝子増幅は, 21例中3例に認めた. p53蛋白は, Pab1801(抗p53抗体)で20例中2例に, DO7(抗p53抗体)で20例中15例に陽性反応を示し, mdm2蛋白は, IF2(抗mdm2抗体)で20例中16例に陽性反応を示した. INK4a/ARF遺伝子異常は, 21例中14例に相同的欠失が認められ, 1例に点突然変異を認めた. INK4a/ARF遺伝子異常は, 胚細胞腫群(10例中9例)の方が, 非胚細胞腫群(11例中6例)より高頻度に存在する傾向にあった(p=0. 09). p53遺伝子, mdm2遺伝子およびINK4a/ARF遺伝子の遺伝子群の中で, 少なくともひとつ以上の遺伝子に異常を認めたものは21例中17例であった. 以上より, 頭蓋内胚細胞性腫瘍におけるp53およびmdm2の発現および遺伝子異常のパターンは精巣胚細胞性腫瘍と類似しており, 両者は, 組織由来が同一であることが推察され, p14ARF(p14alternative reading fram)-mdm2-p53腫瘍抑制経路に関わる遺伝子異常を高頻度に認めることから, この腫瘍抑制経路の崩壊が頭蓋内胚細胞性腫瘍の腫瘍化に関与していることが示唆された.
ISSN:0022-7226