ラット顎下リンパ節内の弾性線維についての組織学的研究
ラット顎下リンパ節内に発現分布する弾性線維の走行状態, 形状を明らかにし, さらにその線維が加齢的に変化がみられるかを光顕的に検索を行ったものである.材料は, 生後0日齢から78週齢まで飼育したSD系ラットを用いて, 左右側の唾液腺とともに摘出し, ワイゲルトのレゾルシン・フクシン染色を行い, 弾性線維を染出し, 検鏡に供した.観察部位は被膜, 辺縁洞, 皮質表層, 皮質深層, リンパ小節の胚中心周囲部, 胚中心, 髄質の7部位である.その結果, 生後0日齢, 1週齢では, 顎下リンパ節の被膜, 皮質, 髄質のすべての部位に弾性線維の発現は認められなかった.生後2週齢では, リンパ節被膜に短く...
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Veröffentlicht in: | 昭和歯学会雑誌 1994/06/30, Vol.14(2), pp.103-115 |
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1. Verfasser: | |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | ラット顎下リンパ節内に発現分布する弾性線維の走行状態, 形状を明らかにし, さらにその線維が加齢的に変化がみられるかを光顕的に検索を行ったものである.材料は, 生後0日齢から78週齢まで飼育したSD系ラットを用いて, 左右側の唾液腺とともに摘出し, ワイゲルトのレゾルシン・フクシン染色を行い, 弾性線維を染出し, 検鏡に供した.観察部位は被膜, 辺縁洞, 皮質表層, 皮質深層, リンパ小節の胚中心周囲部, 胚中心, 髄質の7部位である.その結果, 生後0日齢, 1週齢では, 顎下リンパ節の被膜, 皮質, 髄質のすべての部位に弾性線維の発現は認められなかった.生後2週齢では, リンパ節被膜に短く斜断された繊細な弾性線維が少量認められた.生後3週齢では, 被膜より辺縁洞に侵入する繊細な弾性線維が蛇行状に少量認められた.生後5週齢では, 被膜, 辺縁洞, 皮質表層に中等度の弾性線維の発現量がみられ, 皮質深層には少量認められた.これらの線維は繊細で, 蛇行状, 糸屑状, 顯粒状を呈し比較的広範囲に発現していた.生後9週齢では, 弾性線維の発現走行状態は生後5週齢とほぼ同様であったが, 9週齢に至ってリンパ小節の胚中心周囲部に少量の弾性線維が発現した.これらの線維は直線状, 蛮曲状, 分岐状, 顯粒状を呈していた.また髄質には蛇行状, 網状の弾性線維が少量認められた.生後26週齢では, 観察部位のすべてに弾性線維の発現を認めた.特に, リンパ小節の胚中心については, これまでの先人の報告では弾性線維は認められないといわれているが, 本研究では生後26週齢から胚中心に弾性線維の発現を認めた.生後30週齢, 52週齢, 78週齢では, 被膜に中等度, 辺縁洞に多量の弾性線維を認めたが, 皮質表層では30週齢, 52週齢, 78週齢ともに生後26週齢と同様に多量の弾性線維が認められた.弾性線維の走行形態は, これまでの形状とほとんど同様であるが, 線維の太さと発現量は増齢と共に増す傾向を示し, 皮質, 髄質において糸屑状ないし網状を呈する弾性線維の発現が増加して広範囲に分布していた.リンパ小節の胚中心に発現した弾性線維は生後78週齢で明確に認められ, リンパ小節周囲から胚中心に向って求心性に弾性線維が発現するものと思われる.生後30週齢, 52週齢, 78週齢の髄質では, 弾性線維は中等度の発現量を示した.皮質と髄質とに発現した弾性線維量を比較すると皮質の方が多く, また, その線維の形態も種々な走行形状を示した.さらに顎下リンパ節の弾性線維の加齢的変化を認めたが, 加齢に伴い弾性線維が増量するのは, リンパ節実質内の細網線維の骨格をより強固に保持するため生理的, 機能的に発現するものと考える.また, 実質内の細網線維の一部が弾性線維に置き換わる可能性もあるものと思われる.いずれにせよ本弾性線維の発現存在は, リンパ流動の調節に重要な意義を有していることを示唆するものであると考える. |
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ISSN: | 0285-922X 2186-5396 |
DOI: | 10.11516/dentalmedres1981.14.103 |