舌口底切除後の構音機能の評価について

口腔癌患者の再建は, 形態的な回復だけではなく, 術後機能の回復を期待して行われるが, 術後機能の客観的評価に関する研究は比較的少ない. われわれは単純縫縮例と前腕皮弁再建例の構音機能について, 発語明瞭皮検査(以下明瞭度検査)の結果, エレクトロハラトグラム(以下EPG)所見, ならびに従来より音声認識の一手法として広く用いられている線形予測法による音響分析結果とを比較検討したのでその概要を報告する. 対象症例は, 当科において扁平上皮癌のため舌, 口底切除術後, 単純縫縮を行った症例4例, および前腕皮弁による即時再建を行った症例4例である. 構音機能の検査は, 各症例について術前, 術後...

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Veröffentlicht in:昭和歯学会雑誌 1992, Vol.12 (4), p.384-384
Hauptverfasser: 和久本雅彦, 今井智子, 山下夕香里, 大野康亮, 道健一
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:口腔癌患者の再建は, 形態的な回復だけではなく, 術後機能の回復を期待して行われるが, 術後機能の客観的評価に関する研究は比較的少ない. われわれは単純縫縮例と前腕皮弁再建例の構音機能について, 発語明瞭皮検査(以下明瞭度検査)の結果, エレクトロハラトグラム(以下EPG)所見, ならびに従来より音声認識の一手法として広く用いられている線形予測法による音響分析結果とを比較検討したのでその概要を報告する. 対象症例は, 当科において扁平上皮癌のため舌, 口底切除術後, 単純縫縮を行った症例4例, および前腕皮弁による即時再建を行った症例4例である. 構音機能の検査は, 各症例について術前, 術後1か月, 6か月, 1年時に明瞭度検査および音声分析を行い, 術後6か月時にEPGによる構音様式の観察を行った. 対象音は破裂音/ta/を選択した. 音響分析は, 破裂音の音声認識に用いられる周波数領域, および時間領域の特性に着目した. 周波数領域については子音開始部スペクトル包絡上で最大デシベル値を示す周波数値を物理評価量Consonant Peak Energy Frequency(CPF)とし, 時間領域については子音部から後続母音定常部までの第2ホルマント(F2), 第3ホルマント(F3)遷移の評価によって物理評価量ΔF2-ΔF3を設定し, 検討を行った. その結果, 単純縫縮例では, 経時的に極端な物理評価量の変化は認められず, 構音機能の改善はわずかであることが推察され, また明瞭度検査の結果でもあきらかな改善傾向は認められなかった. 前腕皮弁再建例では, EPGと音響分析で舌と口蓋の接触が健常者とは異なって広い範囲に及んでいる所見が示された. しかし, 音響分析によって舌の可動性の回復が明瞭に示され, さらに明瞭度検査の結果でも良好な結果が得られた. よって単純縫縮例よりも, 前腕皮弁再建例の方が経時的な構音障害の改善側向は顕著で, 術後障害された舌の運動機能の回復がその大きな要因であると考えられた.
ISSN:0285-922X