前腕部皮静脈の静脈弁の観察

顕微鏡下での微小血管吻合を応用する遊離前腕皮弁は, 頭頸部再建外科において最も注目されている再建材の一つであり, 当科においても4年前より口腔癌の再建に本法を応用している. そこで今回は, 遊離前腕皮弁の静脈吻合の際に問題となる前腕部皮静脈, 特に橈側前腕皮弁の臨床解剖として重要な部位を中心に静脈弁について観察を行い, 若干の知見を得たので報告する. 本研究に使用した資料は, 一定条件下で固定した, 25歳から95歳までの解剖体9体の左前腕部の皮静脈で, 静脈の内径, 静脈弁間距離の計測および静脈弁の位置, 形態の観察を行った. 皮静脈の本幹および本幹以外で横断面が不正型のものでは剪刀で切り開...

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Hauptverfasser: 島晴信, 大野康亮, 道健一, 江川薫, 滝口励司
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:顕微鏡下での微小血管吻合を応用する遊離前腕皮弁は, 頭頸部再建外科において最も注目されている再建材の一つであり, 当科においても4年前より口腔癌の再建に本法を応用している. そこで今回は, 遊離前腕皮弁の静脈吻合の際に問題となる前腕部皮静脈, 特に橈側前腕皮弁の臨床解剖として重要な部位を中心に静脈弁について観察を行い, 若干の知見を得たので報告する. 本研究に使用した資料は, 一定条件下で固定した, 25歳から95歳までの解剖体9体の左前腕部の皮静脈で, 静脈の内径, 静脈弁間距離の計測および静脈弁の位置, 形態の観察を行った. 皮静脈の本幹および本幹以外で横断面が不正型のものでは剪刀で切り開き, スライドグラスに挟んで円周を計測し, これより直径を算出し内径とした. また本幹以外で横断面が円形に近い静脈は直交する二方向で計測しその平均値を算出し, それを内径とした. 計測には, ニコン実体顕微鏡SMZ-10, コーガク社製デジタル計測装置1-0型を用いた. その結果静脈弁の分布は, 肘正中皮静脈分岐直前の尭側皮静脈の部位では, 9体中8体と高頻度で見られ, 合流直前の肘正中皮静脈と尭骨リスター結節上の尭側皮静脈の付近で比較的多く見られ, 肘正中皮静脈合流直後から上腕骨内側上顎から近位に5cmの尺側皮静脈には見られず, また肘正中皮静脈分岐後から外側上顎から近位に5cmの尭側皮静脈では少数しか存在しなかった. また, 本幹で合流, 分岐, 側枝のない部分よりもそれらのある部分の方が多く見られた. 静脈弁の形態は4型に分類することができ, そのうちII型の二葉性弁が82.3%と最多で, 大多数を占めた. 本幹の内径と静脈弁の数との間には一定の関係は認められなかった. 静脈弁の形態と側脈弁の部位との関係では, 本幹で合流, 分岐, 側枝の存在する部分は, それらのない部分に比較して, 一葉性弁がやや多い傾向が認められた.
ISSN:0285-922X