咀嚼筋の痛みを運ぶ求心性神経と延髄における入力部位

咀嚼系機能障害を考える際, 咀嚼筋痛は重要な問題であるが, その神経生理学的解明はあまり行われていない. そこで今回延髄レベルでの神経生理学的特質を解明する目的で三叉神経脊髄路核尾側亜核に咬筋から入力する感覚情報について検討した. 実験にはウレタン麻酔を施したウィスター系アルビノラットを用いた. 咬筋筋膜と延髄を露出後, 咬筋中央に双極針電極を置き持続時間0.1ms矩形波定電流パルスにて刺激を与えた. 延髄での応答は2%ポンタミンスカイプルーを含む0.5M酢酸ナトリウムを満たしたガラス管微小電極で導出し, 10回加算平均を行い閾値, 振幅, 潜時について分析を行った. 記録部位はobexからの...

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Hauptverfasser: 小島有紀子, 山上芳雄, 新谷明幸, 古屋良一, 川和忠治, 鶴岡正吉
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Zusammenfassung:咀嚼系機能障害を考える際, 咀嚼筋痛は重要な問題であるが, その神経生理学的解明はあまり行われていない. そこで今回延髄レベルでの神経生理学的特質を解明する目的で三叉神経脊髄路核尾側亜核に咬筋から入力する感覚情報について検討した. 実験にはウレタン麻酔を施したウィスター系アルビノラットを用いた. 咬筋筋膜と延髄を露出後, 咬筋中央に双極針電極を置き持続時間0.1ms矩形波定電流パルスにて刺激を与えた. 延髄での応答は2%ポンタミンスカイプルーを含む0.5M酢酸ナトリウムを満たしたガラス管微小電極で導出し, 10回加算平均を行い閾値, 振幅, 潜時について分析を行った. 記録部位はobexからの三次元的距離をマイクロマニピュレータの目盛で読み取り, さらに凍結組織切片を作成し検索確認した. また本実験での応答が咬筋筋膜からのみの入力によることは, 顔面神経枝切断と咬筋表面麻酔実験により確認した. 咬筋電気刺激による陰性誘発電位には平均1.41msの短潜時を持つもの, 平均6.19msの長潜時を持つもの, その両者を同時に持つものがあった. 一次求心性神経の長さを解剖学的に25mmと推定して伝導速度を計算すると, 短潜時群は平均18.94±0.88m/s, 長潜時群は平均4.12±0.09m/sであり両者ともAδ線維の範囲であった. さらにおのおのの群の刺激強さと誘発電位の振幅との関係は, 両群ともある範囲でベキ関数が成立し, そのベキ指数はほとんど差がなかった. しかし, 成立範囲は刺激強さ, 振幅とも短潜時群のほうが広かった. また応答の得られた部位は短潜時群は延髄網様体と尾側亜核に, 長潜時群は尾側亜核にあり, 両者に局在性が認められた. 両者同時に記録された部位は網様体と尾側亜核に散在していた. 以上の結果より, 咬筋から脊髄路核尾側部に入力する求心性神経は刺激に対する応答の範囲が異なる2種類の細径線維からなり, その入力部位も異なることが明らかとなった.
ISSN:0285-922X