義歯床下の内圧測定に関する研究

全部床義歯の維持力は, 唾液の粘着力と凝集力, 床下の陰圧, および顎堤の解剖的維持力などの総和であると考えられている. しかし, 義歯床下の陰圧のはたす役割に関しては, いまだに明確な結論を得るには至っていない. そこで, 私達は, 床下陰圧面から義歯床の維持および離脱の動態を明らかにすることを目的として研究を行った. 今回はまず, 私たちが試作した床下内圧測定装置について解説し, さらに, 本装置を用いて顎堤擬似模型上で行った基礎的な実験の結果について報告する. 1. 装置および実験方法:床下内圧測定装置は, 五つの圧力変換器(共和電業社製PS-2KB), 動ひずみ測定器(三栄測器社製St...

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Veröffentlicht in:昭和歯学会雑誌 1982, Vol.2 (1), p.106-106
Hauptverfasser: 河江信, 五十嵐順正, 茂木知治, 飯島喜浩, 三浦頡剛, 芝彦
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:全部床義歯の維持力は, 唾液の粘着力と凝集力, 床下の陰圧, および顎堤の解剖的維持力などの総和であると考えられている. しかし, 義歯床下の陰圧のはたす役割に関しては, いまだに明確な結論を得るには至っていない. そこで, 私達は, 床下陰圧面から義歯床の維持および離脱の動態を明らかにすることを目的として研究を行った. 今回はまず, 私たちが試作した床下内圧測定装置について解説し, さらに, 本装置を用いて顎堤擬似模型上で行った基礎的な実験の結果について報告する. 1. 装置および実験方法:床下内圧測定装置は, 五つの圧力変換器(共和電業社製PS-2KB), 動ひずみ測定器(三栄測器社製Strain Amplmer 6M-61型), 記録装置(三栄測器社製Rectigraph 8K-12型)により構成されている. 使用した圧力変換器の本体は, 直径6mm, 厚さ0.6mmと微小であるため, 義歯の形態を損なうことなくこれを基礎床粘膜面に設置することができ, 内圧の測定を可能とした. 実験は, Nissin社製Dental Study Model上で, 基礎床下にグリセリン液を介在させて行った. 2. 実験結果および考察:義歯床の維持安定に関与するといわれている床下内圧は, 特徴的な経時的変化を呈することが観察された. 次に, 床下陰圧の変動に伴う口蓋中央部での床離脱力の変化を比較したところ, 陰圧が, 平均-67.2, -34.1, 0g/cm^2 と減少するにつれて, 床離脱力も, 平均900, 380, 260gと減少することがわかった. この結果から判断して, 床下陰圧が義歯床の維持に関与している可能性はきわめて強いものと思われた. さらに, 本装置は狭い床下空間に生じた内圧の微妙な部位差を測定弁別する能力を有していることも確認された.
ISSN:0285-922X