脳動脈攣縮の研究
我々は本学会において, クモ膜下出血時におけるいわゆる攣縮動脈を病理組織学的に検索し, 攣縮の本態は単なる機能的・神経的な収縮ではなく, 器質的変化によるものであることを報告した. 墜縮動脈壁の変化の主なるものは, 内膜の肥厚・浮腫・透過性の亢進, 内弾性板のうねりの増強, 中膜の筋細胞内空胞形成・浮腫様変化・染色性の低下・筋細胞の電子密度の増加・筋細胞間隙の拡大とcelldebrisの出現などである. そして, これらの変化により, 内膜・中膜の肥厚, 壊死を起こし, 内腔が狭窄された状態が, 脳血管写上のいわゆる攣縮であると推論した. 今回は, 我々の過去の研究を総括するとともに, cyc...
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Veröffentlicht in: | Neurologia medico-chirurgica 1977, Vol.17 (suppl), p.30-31 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 我々は本学会において, クモ膜下出血時におけるいわゆる攣縮動脈を病理組織学的に検索し, 攣縮の本態は単なる機能的・神経的な収縮ではなく, 器質的変化によるものであることを報告した. 墜縮動脈壁の変化の主なるものは, 内膜の肥厚・浮腫・透過性の亢進, 内弾性板のうねりの増強, 中膜の筋細胞内空胞形成・浮腫様変化・染色性の低下・筋細胞の電子密度の増加・筋細胞間隙の拡大とcelldebrisの出現などである. そして, これらの変化により, 内膜・中膜の肥厚, 壊死を起こし, 内腔が狭窄された状態が, 脳血管写上のいわゆる攣縮であると推論した. 今回は, 我々の過去の研究を総括するとともに, cyclic AMPの箪縮動脈壁に対する影響について追究した. Cyclic AMPは, 中膜筋層の修復過程に大きな影響をもつものと考えられる. このcyclic AMP投与により, いわゆる攣縮時に存在する病理学的所見がどのような変化を示すかについて実験的に検索した. 実験方法は, クモ膜下出血犬にdibutyryl cyclic AMP 2mg/kgを連日静脈内投与し, 経時的に剖検し, 各時期について脳主幹動脈壁の組織像を光顕・電顕的に観察し, 非投与群のそれと比較検討した. DBCAMP投与群においても内皮細胞内空胞形成・内皮細胞の収縮圧排, 内弾性板のうねりの増強, 中膜筋細胞内空胞形成・核の変形などの変化を認めたが, 筋細胞の境界は明瞭で, 核も多量に存在し, 細胞間隙の拡大も少ない. 以上のごとく, クモ膜下出血により筋層が収縮したとみられる所見は明瞭に存在するが非投与群にみられる変化と比較すると, はるかに軽微な所見を示した. Cyclic AMPの投与は, いわゆる攣縮動脈に出現する器質的変化の予防, あるいは修復に有効な手段であることを示唆する成績を得たので報告する. |
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ISSN: | 0470-8105 |