脳腫瘍の臨床免疫学的研究
われわれは脳腫瘍, 特にグリオーマ患者の細胞性免疫能が, 入院時すでに正常人に比べ低下していることを種種の検査法を用いて証明し, また, その後の治療経過中にさらに低下する傾向を示すことを個々の症例について明らかにしてきた. 最近, われわれはグリオーマの治療に手術と放射線照射-Bleomycin併用治療法を組合わせて行なっているが, その後の検索から本治療の経過中の免疫抑制には, ある種の傾向が存在することが明らかとなった. 今回は, その結果を参考に実際の臨床効果, 特に予後との関係について検討し, 免疫抑制状態のもつ臨床的意義を考察した. 30例の種々のグリオーマ患者を対象としてPPD試...
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Veröffentlicht in: | Neurologia medico-chirurgica 1975, Vol.15 (suppl), p.28-28 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | われわれは脳腫瘍, 特にグリオーマ患者の細胞性免疫能が, 入院時すでに正常人に比べ低下していることを種種の検査法を用いて証明し, また, その後の治療経過中にさらに低下する傾向を示すことを個々の症例について明らかにしてきた. 最近, われわれはグリオーマの治療に手術と放射線照射-Bleomycin併用治療法を組合わせて行なっているが, その後の検索から本治療の経過中の免疫抑制には, ある種の傾向が存在することが明らかとなった. 今回は, その結果を参考に実際の臨床効果, 特に予後との関係について検討し, 免疫抑制状態のもつ臨床的意義を考察した. 30例の種々のグリオーマ患者を対象としてPPD試験, 免疫担当細胞の量的変動およびリンパ球幼若化率の変化を観察したが, それらはいずれも治療期間に一致した低下, 治療休止時に一致した回復を示しつつ, 除々に低下してゆく傾向があり, 治療終了時には大半の症例に免疫抑制が認められた. 治療終了後の回復は数例にしか認められず, 他の症例はその後も抑制状態が持続した. これは本治療法が, 腫瘍自身の発育に伴って起り得る免疫抑制と相俟って生体の免疫機構を不可逆的にまで低下せしめる一因となっていると考えられる. 治療終了時, 免疫機能低下と診断された症例のうち, その後も回復傾向が認められない症例の予後は悪く, 中でも入院時, 遅延型皮膚反応ですでに免疫不全状態が疑われた症例のほとんどは治療終了後数ヵ月の経過で死の転帰を辿った. 退院可能な程の臨床症状の改善が認められても, 免疫機能低下が持続する症例には再発が比較的早期に認められた. グリオーマ患者の治療にさいしては, 免疫機構の変化を経時的に観察することが重要であり, 免疫低下状態が診断された時点で, 積極的な免疫賦活療法の導入が望まれるとともに, 従来の治療法にもなんらかの工夫を加える必要があると考えられる. |
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ISSN: | 0470-8105 |