腰椎椎間板ヘルニアに対する経皮的レーザー椎間板減圧術の適応

1. 目的 腰椎椎間板ヘルニアは, 腰痛下肢痛を示す代表的疾患であり, その潜在罹患人口は計り知れない. 生命に直接関わる疾患ではないだけに, 治療は低侵襲で無ければならない. Open surgeryは手術顕微鏡, 内視鏡の導入により低侵襲化が図られている. 一方低侵襲手術の1形態として経皮的髄核摘出術が1975年に土方らによって創始された1). いわゆる椎間板内治療の幕開けである. しかし操作が煩雑で治療成績も一定しないために普及するには至らなかった. ここでレーザー技術の進歩とあいまって椎間板治療にレーザー技術が導入された. 経皮的レーザー椎間板減圧術Percutaneous Laser...

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Veröffentlicht in:日本レーザー医学会誌 2004-07, Vol.25 (2), p.117-117
Hauptverfasser: 岩月幸一, 吉峰俊樹, 安田恵多良, 粟津邦男
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:1. 目的 腰椎椎間板ヘルニアは, 腰痛下肢痛を示す代表的疾患であり, その潜在罹患人口は計り知れない. 生命に直接関わる疾患ではないだけに, 治療は低侵襲で無ければならない. Open surgeryは手術顕微鏡, 内視鏡の導入により低侵襲化が図られている. 一方低侵襲手術の1形態として経皮的髄核摘出術が1975年に土方らによって創始された1). いわゆる椎間板内治療の幕開けである. しかし操作が煩雑で治療成績も一定しないために普及するには至らなかった. ここでレーザー技術の進歩とあいまって椎間板治療にレーザー技術が導入された. 経皮的レーザー椎間板減圧術Percutaneous Laser Disc Decompression(PLDD)として, 1986年より行われてきている2). 使用されてきたレーザーは, Nd:YAG, Ho:YAG, 半導体レーザーなどである. しかしながらPLDDは, 著効例が存在するものの適応が充分明かでなく, 本治療法に対する批判の一つとなっている. 2. 対象と方法 対象は2000年5月より2001年6月までに腰椎椎間板ヘルニアに対してPLDDを施行した45例. X線透視下にハナコのUSB針にて椎間板を穿刺. 針内にファイバーを挿入しレーザーを照射した. 使用したレーザー機器は, 波長810nmの半導体レーザーである. 3. 結果 下肢放散痛は45例すべてにみられ, そのうちラセーグ徴候が陽性の36例では術後全例(100%)で疼痛が消失したが, ラセーグ徴候が陰性の9例では4例(44%)でのみ疼痛が消失した. 坐骨部疼痛は28例に認められ, そのうちラセーグ徴候が陽性の23例中5例(18%)でのみ疼痛が消失し, ラセーグ徴候が陰性の5例では全例無効であった(O%). 症状の軽快を得られなかった23例については, open surgery(microdiscectomy)を施行した. 23例中21例はcontained hemiaであり, 2例がnon-contained hemiaであった. 4. 考察 PLDDの有効性を持つという医学的根拠は, 1993年choyらによって発表されたレーザーの椎間板内蒸散により, 負荷椎間板内圧が約50%の減弱をみたという実験結果に依拠している3). レーザーエネルギーを椎間板髄核に到達せしめ, そこで発生した熱によって組織が蒸散し, 腔の形成と熱変性による組織の収縮により, 椎間板内圧が減弱する. これにより間接的に神経根への圧迫が軽減され, 神経症状の改善がもたらされるとされている. よって, 現在のところPLDDの適応とされるのは, freely communicating and contained lumber disc hemiationとされる4). しかしながら, 症状また理学所見に基づいた適応の検討はされていない. 今回の検討において, PLDDはラセーグ徴候が陽性の下肢放散痛例でとくに有効であり, 坐骨部疼痛例, とくにラセーグ徴候が陰性の症例には有効ではなかった. 椎間板ヘルニアの発症機序には, 機械的圧迫と化学的因子による神経根の刺激という2つの因子が考えられている. ラセーグ徴候は, 神経根ヘルニア間のlocal inflammatory reactionとされている5). 一方, 坐骨部疼痛は, 脊椎外側陥凹における神経根の3次元的圧迫がその原因として挙げられている6). よってPLDDは, 神経根が外側陥凹にて圧迫を受けていない, local inflammatoryに有効であり, 外側陥凹での3次元的圧迫を有するものには無効であり, 中でもlocal inflammatoryを有さないものには無効と考えられる. 言い換えれば, 椎間板ヘルニアの発症機序において, 化学的因子には有効であるが機械的因子つまり圧迫には効果が低いと考えられる. この観点において, PLDDに使用するレーザーは, 組織透過性の高い波長が選ばれるべきかもしれない. また, decompressionという本治療法の命名は, 不適当であるかもしれない. 5. 結論 PLDDはラセーグ徴候が陽性の下肢放散痛例でとくに効果的であり, 坐骨部疼痛例, とくにラセーグ徴候が陰性の症例には効果が乏しいと考えられる. 1) Hijikata S, Nakayama T: Percutaneous nucleotomy: A new treatment method for lumbar disc herniation. J Toden Hosp:713-715, 1975 2) Choy DSJ, Case RB, Fielding W, et al: Percutaneous Laser Nucleolysis of Lumbar Disks. The New England Journal of Medicine 317:771-772, 1987 3) Choy DSJ, Altman P: Fall of Intradiscal Pressure with Laser Ablation. SPINE: State of the Art Reviews 7:23-29, 1993. 4) Black WA: A Neurosurgical Perspective on PLDD. Journal of Clinical Laser Medicine & Surgery 13:167-171, 1995. 5) Stewart MS, Taylor DP: Tension Signs in Lumbar Disc Prolapse. Clinical Orthopaedics and Related Research 75:195-204, 1971 6) Epstein JA, Epstein BS, Rosenthal AD, Carr
ISSN:0288-6200