内視鏡的自家蛍光観察装置による消化管腫瘍の非侵襲診断

1. 背景 精細観察や拡大観察により内視鏡による微細診断能は向上してきたが, 形態や色彩等の可視情報のみで診断を行う限り, 肉眼的変化の少ない段階で病変部位を検出するのは今なお困難である. 生体に青色励起光を照射すると, 腫瘍組織では正常組織に比べ赤色偏移した特異的な自家蛍光の励起現象が知られている. 切除組織に対してはレーザー光を励起光に用いた多くの研究がなされてきたが, 生体で内視鏡観察を行うことは自家蛍光が微弱なため困難であった. 当初開発された消化管用の自家蛍光観察装置(LIFE-GI)は, 励起光にMetal halide lamp等を用いることにより光強度を上げており, 臨床での使...

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Veröffentlicht in:日本レーザー医学会誌 2003-09, Vol.24 (3), p.244-244
Hauptverfasser: 大川昭光, 荻原達雄, 浪久晶弘, 中庭礼智, 小林修, 竹井謙之, 佐藤信紘
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:1. 背景 精細観察や拡大観察により内視鏡による微細診断能は向上してきたが, 形態や色彩等の可視情報のみで診断を行う限り, 肉眼的変化の少ない段階で病変部位を検出するのは今なお困難である. 生体に青色励起光を照射すると, 腫瘍組織では正常組織に比べ赤色偏移した特異的な自家蛍光の励起現象が知られている. 切除組織に対してはレーザー光を励起光に用いた多くの研究がなされてきたが, 生体で内視鏡観察を行うことは自家蛍光が微弱なため困難であった. 当初開発された消化管用の自家蛍光観察装置(LIFE-GI)は, 励起光にMetal halide lamp等を用いることにより光強度を上げており, 臨床での使用が可能となった. これまでの検討では, 腫瘍性病変の検出が容易になり, 肉眼的に認識困難な微小腫瘍性病変の早期検出や病変範囲の同定に有用であると考えられた. 同装置は, 微弱な自家蛍光を検出するための高感度カメラをファイバースコープに接続するシステムであったため, 現在一般に用いられる電子スコープに比ベファイバースコープによる画像の精度には限界がある. そこで, メーカーと共同で電子スコープによる新たな自家蛍光観察システムの開発研究を開始した. 2. 装置 今回試作された自家蛍光観察(AFI;Auto-Fluorescence Imaging)電子スコープには, 白色光撮像用と自家蛍光撮像用の2個のCCDが組み込まれており, 通常画像と蛍光画像が容易に切り替え表示可能となっている. 蛍光画像は, 青色励起光で得られる自家蛍光像(励起;395~475nm, 検出;490~625nm), 白色光による緑(540~560nm)反射光像, 赤(600~620nm)反射光像を面順次に撮像し画像処理による合成像として実時間でモニターに疑似カラー表示される. 3. 結果 ファイバースコープによる自家蛍光観察装置に比較して, AFI電子スコープの白色光通常画像は電子スコープと同等の画像が得られる. 自家蛍光画像にっいては, ファイバースコープによる自家蛍光画像に比べ優れた解像度の画像が得られるため, 小病変でも容易に認識可能であった. AFI電子スコープを用いて大腸の腺種と過形成性ポリープに対する鑑別能の評価を行った結果では(n=143), 自家蛍光画像のみの正診率は腺腫での偽陽性病変の存在のため85%であったが, 白色光通常観察の併用により正診率が95%となり, 腫瘍病変の拾い上げに有用であった. 4. 総括 内視鏡的自家蛍光観察装置が実現すると, 病理診断のための組織採取を必要とせず, また, HpDなどの蛍光増感物質の投与を必要としない非侵襲的腫瘍診断が可能になると考えられる. ファイバースコープを用いた自家蛍光観察装置に次いで電子スコープによる観察システムの開発研究を行っている. 腫瘍性病変の良悪性をモニター色調から確実に鑑別することはまだ困難であり, 正診率の向上には画像構築法等の検討による今後の機器の改良が必要であるが, 本システムでは可視困難な微細病変の検出が可能となり非侵襲的腫瘍スクリーニングヘの応用が期待できる. 参考文献 1)T. Ogihara, H. Watanabe, A. Namihisa, et a1:Clinical experience using a real time autonuorescencee ndoscopy system in the gastrointestinal tract. Dig Ther Endosc 5:ll9-124, 1999 2)荻原達雄, 小林修, 佐藤信紘:大腸癌に対する自家蛍光内視鏡. ポストゲノム時代の内視鏡学. 中山書店. 109-113. 2002
ISSN:0288-6200