8. 脳腫瘍に対するlaserthermia

外科的治療の困難な深部脳腫瘍に対する新しい治療法開発の試みとしてNd:YAG laserを用いて脳の深部照射を試みてきた1). 今回はlaserを低出力で使用するレーザー温熱療法(laserthermia)との比較を行い新たな知見を得たので報告する. 方法 猫50匹を用いた. ネンブタール麻酔下に猫の頭部を定位脳手術装置(成茂SN-3)に固定し, micromanipulaterにquartz fiberを固定し, 脳深部に誘導, laserを照射した. (1)7-15Wで1-5分の連続照射(FUJINON YAG Laser:FYL-M1及びMedilas YAG Laser使用, quar...

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Veröffentlicht in:日本レーザー医学会誌 1990, Vol.11 (1), p.67-68
Hauptverfasser: 藤島一郎, 堺常雄, 杉山憲嗣, 龍浩志, 植村研一
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:外科的治療の困難な深部脳腫瘍に対する新しい治療法開発の試みとしてNd:YAG laserを用いて脳の深部照射を試みてきた1). 今回はlaserを低出力で使用するレーザー温熱療法(laserthermia)との比較を行い新たな知見を得たので報告する. 方法 猫50匹を用いた. ネンブタール麻酔下に猫の頭部を定位脳手術装置(成茂SN-3)に固定し, micromanipulaterにquartz fiberを固定し, 脳深部に誘導, laserを照射した. (1)7-15Wで1-5分の連続照射(FUJINON YAG Laser:FYL-M1及びMedilas YAG Laser使用, quartz fiber先端は凸面加工). (2)2.5-3W, 30分のLaserthermia(SLT Laser CL50, Computer Control Laser-thermia System, 3-5mm SLT frosted fiber tip使用, 周辺温度43.0℃)を行い経時的に屠殺し, HE染色にてlesionを観察した. なお, Laserthermia終了直後にTrypan Blueを静注し脳血管関門(BBB)の状態を観察した. 結果 7-15W連続照射 ; 中心部は蒸散し空洞形成, 周囲に炭化層, 壊死層, 浮腫層を形成. 24時間から48時間にかけて白質中心に強い浮腫層が広がり壊死層に点状出血が生じた2). laserthermia ; 中心部は凝固壊死層であり炭化層の形成無し, 43.0℃の加温範囲に一致して僅かに浮腫層を認めた. 24-48時間経過後に浮腫層の広がりを見たが局所にとどまった. 43.0℃に加温した範囲は, Laserthermia終了後に静注したTrypan Blueでリング状に染まり加温した脳組織のBBBがopenすることを確認した. 考案 Nd:YAG Laserは凝固, 止血作用に優れ, 細いquartz fiberで導光できるため扱いやすく, 脳深部への誘導も容易である. 従来外科的治療の困難であった深部脳腫瘍に対して中心部から凝固蒸散するNd:YAG Laserの深部照射は多いに治療効果が期待できたが1), 術後に生じる脳浮腫が問題であった2). これに対してLaserの出力を2-3Wで用いるlaserthermiaは脳浮腫を最小限に抑えることが出来た. また加温範囲のBBBがopenすることにより抗癌剤を併用すれば腫瘍のみに高濃度に集積させることが期待できる. 脳腫瘍に対する温熱療法は3)Microwave, Radiofrequencyなどをheat sourceとして成果を挙げているが, 脳深部の正確な局所加温は困難である. laserを用いた局所温熱療法はceramicsを用いた高拡散microrodとcomputerを導入した制御システムの開発により正確な温度制御が行えるようになった. 脳神経外科領域ではCT guided stereotactic methodを用い脳深部のlesionに対しても正確な加温が行える. 現在, 基礎実験をもとに臨床応用を行っているが良好な結果を得ている. 結語 脳腫瘍に対するlaserthermiaは安全性も高く今後の臨床応用に期待が持たれる. 文献 1)藤島一郎, 龍浩志他:Nd-YAGレーザーによる脳深部照射の基礎的実験. Neurol Med Chir(Tokyo) 26:621-627, 1986. 2)藤島一郎, 堺常雄他:Nd-YAGレーザーによる実験的脳深部照射-急性実験と慢性実験の比較. 日本レーザー医学会誌7(3):77-78, 1987 3) Salcman M.Samaras GM, et al.:Hyperthermia for Brain Tumor:Biological Rationale. Neurosurg. 9:327-335, 1981 4)鈴木荘太郎. 青木純他:内視鏡下Nd-YAGレーザー温熱療法に関する基礎的研究及び制御システムの開発 日本レーザー医学会誌6(3):347-350, 1986
ISSN:0288-6200