5. さい帯血バンクの現状と将来
1998年8月に「準準血移植検討会中間まとめ」が策定され, 1999年8月に日本さい帯血バンクネットワーク(以下ネットワーク)の発足を契機に我が国の臍帯血移植療法は大きく発展し, 対象も小児中心から成人に, さらに高齢者に拡大して当初の試験的治療から標準治療となろうとしている. 年間移植数は年々増加して昨年は1000例を越し, 今年は骨髄移植数とほぼ同数となって累計移植例数は約8000例が見込まれている. 発足以来バンク運営は各さい帯血バンクの独自性を尊重して最低限の基準のもとに創意工夫と情熱により支えられてきたが, 更なる治療の進歩, 成績の向上に応えるためにはより安全で高い品質のさい帯血が...
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Veröffentlicht in: | 日本輸血細胞治療学会誌 2012, Vol.58 (1), p.92-93 |
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1. Verfasser: | |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 1998年8月に「準準血移植検討会中間まとめ」が策定され, 1999年8月に日本さい帯血バンクネットワーク(以下ネットワーク)の発足を契機に我が国の臍帯血移植療法は大きく発展し, 対象も小児中心から成人に, さらに高齢者に拡大して当初の試験的治療から標準治療となろうとしている. 年間移植数は年々増加して昨年は1000例を越し, 今年は骨髄移植数とほぼ同数となって累計移植例数は約8000例が見込まれている. 発足以来バンク運営は各さい帯血バンクの独自性を尊重して最低限の基準のもとに創意工夫と情熱により支えられてきたが, 更なる治療の進歩, 成績の向上に応えるためにはより安全で高い品質のさい帯血が求められ, GMPに準じた手順書の整備と標準化が課題となっている. ネットワーク黎明期には保存されているさい帯血の細胞数が少なかったため提供先の大半は小児であったが, その後保存さい帯血の最低細胞数基準を漸次引き上げて2007年には8×108とし, 成人の移植に対応しようとしている. しかし, ネットワークの保存目標である“10×108以上の細胞数のさい帯血を1万個以上”は本年8月でようやく6000個に過ぎず, 目標達成のためには採取施設や採取スタッフの理解と協力を得て, 今まで以上に細胞数の多いさい帯血の確保に努める必要がある. 一方で細胞数の少ないさい帯血の有効利用も問題となっており, 進行中の複数臍帯血移植や骨髄内臍帯血移植などの臨床研究の成果が待たれるところである. ネットワークは大学や日赤の研究部門が中心となってスタートし, 長らく11バンクの体制で活動してきた. 財源の多くは国庫補助により, 不足分を各母体組織が賄ってきたが, 今後の事業の拡大とそれに伴う安全性確保や高度の品質管理に対応するには国による財政基盤の確立とこれを支える法整備が急務となっている. また, ネットワークでは標準化と効率的な運営のために調整保存や検査業務の集約が進んでおり, さい帯血バンク事業は初期的段階から継続的で責任ある運営体制への転換が迫られているところである. 今やさい帯血移植は国民の健康を守るためには欠かせない治療法であり, これを支えるさい帯血バンク事業の推進は国の責務である. また, 日本赤十字社には継続的な事業運営の遂行や, 血液事業で培ったGMPのノウハウを生かしたリーダーシップなどの面が期待されている. |
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ISSN: | 1881-3011 |