12. 血液型キメラを強く疑った1症例
【はじめに】血液型キメラとは, 2種類の遺伝的由来の異なる血球が体内に混在する状態をいい, 2卵性双生児が胎生初期に血管吻合し個体由来の異なる2種類の血液細胞が産生される双生児キメラ(twin chimera)と, 1つの卵子が2つの精子を受精した後融合して1個体となり発育する2精子性キメラ(dispermic chimera)とに分類される. 今回我々は, ABO式血液型検査のオモテ試験で部分凝集を認め, キメラと疑われた症例を経験したので報告する. 【症例】58歳, 女性. 輸血歴・移植歴無し. 他院にて膀胱瘤と診断され, 治療目的で当院紹介となった. 手術施行にあたり, 術前の輸血検査に...
Gespeichert in:
Veröffentlicht in: | 日本輸血細胞治療学会誌 2012, Vol.58 (1), p.61-62 |
---|---|
Hauptverfasser: | , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
Tags: |
Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
|
Zusammenfassung: | 【はじめに】血液型キメラとは, 2種類の遺伝的由来の異なる血球が体内に混在する状態をいい, 2卵性双生児が胎生初期に血管吻合し個体由来の異なる2種類の血液細胞が産生される双生児キメラ(twin chimera)と, 1つの卵子が2つの精子を受精した後融合して1個体となり発育する2精子性キメラ(dispermic chimera)とに分類される. 今回我々は, ABO式血液型検査のオモテ試験で部分凝集を認め, キメラと疑われた症例を経験したので報告する. 【症例】58歳, 女性. 輸血歴・移植歴無し. 他院にて膀胱瘤と診断され, 治療目的で当院紹介となった. 手術施行にあたり, 術前の輸血検査においてABO式血液型検査のオモテ試験で部分凝集を認めた. 双子兄弟姉妹の存在については患者本人に確認し, 否定された. 【検査結果】(1)オモテ試験:抗A血清(4+mf), 抗B血清(0), 抗A1レクチン(4+mf), 抗Hレクチン(4+) (2)ウラ試験:A1血球(0), B血球(3+) (3)A型転移酵素:16倍 (4)抗A被凝集価:>512倍(対照A1型:>512倍) (5)糖密度勾配法による分離試験 抗A血清および抗A1レクチンによる凝集塊分離後の非凝集血球にて 抗A血清(0), 抗B血清(0), 抗A1レクチン(0), 抗Hレクチン(4+) (6)ABO式以外の血液型:DccEE(R2R2), Jk(a+b+), Fy(a+b-), Di(a-)これらの抗血清との反応において, いずれも部分凝集は認めなかった. 【まとめ】これらの検査結果から, A型とO型のキメラを強く疑った. 遺伝子検査等は実施しておらず, 双生児キメラか2精子性キメラかの特定もできなかった. 部分凝集や弱い凝集の重要性を示す症例であり, これらの見落としがないよう日々トレーニングを積む必要性を強く感じた. |
---|---|
ISSN: | 1881-3011 |