2. 震災時の当院における状況

3月11日の東日本大震災で当院は大きな被害を受けた. 14棟のうち半数の7棟に中破以上の損傷を受け, 3階から7階に病棟, その他透析室や機能検査室, 輸血センタなどを有する主要な建屋1棟が病床として利用困難となり, 他病棟へ200名以上の患者の移送を必要とした. 電気, ガス, 給水といった社会的インフラの供給が1~7日間に渡り絶たれ, 限られた非常用備蓄を制限しながら使用せざるを得なかった. 多数の配管や主要な設備, 機器も破損し, 高度な医療機器, 輸血検査を含む臨床検査機器の多くが一時的に使用困難となった. 多数の在院患者に加え, 救急患者も来院し, 入院患者の一部を他の病院へ移送せざ...

Ausführliche Beschreibung

Gespeichert in:
Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:日本輸血細胞治療学会誌 2011, Vol.57 (6), p.503-504
Hauptverfasser: 品川篤司, 大内崇徳, 小山田和子, 江尻裕子, 金澤嘉文, 田畑公章, 菊池洋美, 松田佳之
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
Tags: Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
Beschreibung
Zusammenfassung:3月11日の東日本大震災で当院は大きな被害を受けた. 14棟のうち半数の7棟に中破以上の損傷を受け, 3階から7階に病棟, その他透析室や機能検査室, 輸血センタなどを有する主要な建屋1棟が病床として利用困難となり, 他病棟へ200名以上の患者の移送を必要とした. 電気, ガス, 給水といった社会的インフラの供給が1~7日間に渡り絶たれ, 限られた非常用備蓄を制限しながら使用せざるを得なかった. 多数の配管や主要な設備, 機器も破損し, 高度な医療機器, 輸血検査を含む臨床検査機器の多くが一時的に使用困難となった. 多数の在院患者に加え, 救急患者も来院し, 入院患者の一部を他の病院へ移送せざるを得ない状況であった. 診療は身体所見と限られた検査所見で判断するしかなかった. 充分な休息と食事もとれず, 医療スタッフの疲労も蓄積していた. このような特殊な状況下で輸血医療を含めて我々がどのような対応を行ったかを報告する. 輸血に関しては当院は以前から異所による複数回検査での血液型確定を取り入れていたが, このような状況下, 震災早期に異型適合血輸血の適応拡大を決定した. なお2010年4月から2011年3月までに18例のO型異型適合血輸血を行ったが, このうち震災後は3例のみであり全例問題なく行い得た. AB型FFP輸血例はなかった. 一時電話回線の混雑により血液センターとの連絡に苦慮したが, 幸いPHSで連絡をとることができた. 交通網の障害から供給体制にも不安があったが, 多少の制限はあったものの血液センターのご尽力で欠品は生じなかった. 輸血スタッフは4名であったが, 適宜状況に併せて輪番制をとり, 疲労からの過誤防止に努めた. 血液分画製剤についても薬務局で緊急時備蓄を増やした矢先であり, また大量の消費例も発生せず, 問題は生じなかった. 今回輸血医療に関して大きな問題は起きなかったものの, 施設内のシステムや施設を取り巻く外部環境にも多くの混乱や不安点, 問題点が存在することが明らかとなった. 今後の災害時の輸血医療に役立てるべくこれらの問題点について皆さんと検討したい.
ISSN:1881-3011