14. 妊婦が保有する間接抗グロブリン法陰性のpH依存性抗Mについて
【目的】妊婦が保有する抗Mは臨床上問題となることは少ないが, 胎児や新生児の溶血性疾患(hemolytic disease of the fetus and newborn;HDFN)に関与することがある. このような抗Mは, 胎盤通過性のIgGであるため, 通常は間接抗グロブリン法で検出される. 今回我々は, 第1子に重篤なHDFNを認めた抗M保有の妊婦から, 間接抗グロブリン法が陰性のpH依存性抗Mを見出したので報告する. 【症例】27歳女性. 輸血歴なし, 第2子妊娠16週. NN型, 抗M保有. 父親はMM型. 第1子は抗Mによると考えられる早期黄疸によりNICU管理となった. このた...
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Veröffentlicht in: | 日本輸血細胞治療学会誌 2011, Vol.57 (3), p.205-205 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 【目的】妊婦が保有する抗Mは臨床上問題となることは少ないが, 胎児や新生児の溶血性疾患(hemolytic disease of the fetus and newborn;HDFN)に関与することがある. このような抗Mは, 胎盤通過性のIgGであるため, 通常は間接抗グロブリン法で検出される. 今回我々は, 第1子に重篤なHDFNを認めた抗M保有の妊婦から, 間接抗グロブリン法が陰性のpH依存性抗Mを見出したので報告する. 【症例】27歳女性. 輸血歴なし, 第2子妊娠16週. NN型, 抗M保有. 父親はMM型. 第1子は抗Mによると考えられる早期黄疸によりNICU管理となった. このため, 第2子妊娠の胎児管理を目的として, 抗Mの抗体価とIgクラスについて当施設に検査依頼があった. 【方法および成績】間接抗グロブリン法(反応増強剤未添加)による抗体価測定において, 原液および2~4倍希釈した血漿の反応は陰性であった. しかし, 8倍希釈から凝集がみられ, 64倍の抗体価を示した. そこで, 連続希釈によるpHの低下(被検血漿pH7.7, 希釈用生理食塩液pH5.3)がこの現象の原因と考え, 被検血漿を酸性化したところ, pH7.0以下では原液でも強い凝集を示すことが確認された. なお, 抗MのIgクラスはIgGであった. また, 17例の献血者由来IgG抗MについてpHの影響を調べたところ, 15例が酸性下で強い凝集を示した. 【まとめ】1965年にBeattieらが見出した酸性領域に強い活性をもつpH依存性抗Mは, 少数の報告例があるにすぎない. しかし, 今回の結果から, 抗Mの多くはpH依存性であることが示唆された. pH依存性抗Mは, 血液(pH7.4付近)よりも低いpHで強い活性を示すため, 輸血における臨床的意義は高くないと推測される. しかし, 母親IgGは胎盤細胞のFcRn(neonatal Fc receptor)と酸性下(pH6.0付近)で結合して児に輸送されることが知られており, HDFNとの関連性は否定できない. 本症例のpH依存性抗Mについては, 第2子出産に向けて胎児・新生児への影響を調査する予定である. |
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ISSN: | 1881-3011 |