8. IgG1単独抗KANNO抗体保有妊婦より無事出産した症例―臨床と日赤の関わりについて

【はじめに】抗KANNO抗体保持患者への不適合輸血は文献上において, 現在のところ溶血性副作用を認めていない. 一方, 抗KANNO抗体保有妊婦より生まれた新生児にも溶血性疾患が見られなかったとの報告もあるが報告数は少ない. この度, 抗KANNO抗体と同定された妊婦経過及び胎・新生児への影響の有無について検討した. 【症例】A型, Rh(+), 輸血歴なし, 5妊3出産, (夫A型, Rh(+)), 第1子, 第2子, 第3子は自然分娩. なお1997年, 2004年中絶経験有. 今回第4子の出産に対し, 抗KANNO抗体を妊娠28週目に確認. 40週目に無事自然分娩をした. 【経過】主治医...

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Veröffentlicht in:日本輸血細胞治療学会誌 2009, Vol.55 (5), p.649-649
Hauptverfasser: 高木勝宏, 樫村誠, 佐藤まゆみ, 斉藤美里, 新藤恵美, 江尻智江, 西村憲子, 出口智美, 荒川崇, 一ノ渡俊也, 武井裕, 坪井正碩, 伊藤正一, 荻山佳子, 菊地正輝, 森田恒之
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:【はじめに】抗KANNO抗体保持患者への不適合輸血は文献上において, 現在のところ溶血性副作用を認めていない. 一方, 抗KANNO抗体保有妊婦より生まれた新生児にも溶血性疾患が見られなかったとの報告もあるが報告数は少ない. この度, 抗KANNO抗体と同定された妊婦経過及び胎・新生児への影響の有無について検討した. 【症例】A型, Rh(+), 輸血歴なし, 5妊3出産, (夫A型, Rh(+)), 第1子, 第2子, 第3子は自然分娩. なお1997年, 2004年中絶経験有. 今回第4子の出産に対し, 抗KANNO抗体を妊娠28週目に確認. 40週目に無事自然分娩をした. 【経過】主治医との複数回面談により, 医院での分娩を選択. 安全な分娩を確保する為, 医院側では胎児貧血発症する場合の数種の臨床的評価法を実施. 日赤側は自己血採血(3回)の技術協力及び抗KANNO抗体の血清学的検査を実施. 【成績】血清学的検査(1)抗KANNO抗体のIgGサブクラス:IgG1. (2)抗KANNO抗体のPhagocytosis Assay%の経時推移は妊娠28週5.0%, 36週4.3%, 出産後35日5.3%. (Phagocytosis Assay%は20%以上を陽性とした. )抗体価の経時推移においては, いずれも16倍であった. 臨床的評価法(1)胎児胸水・腹水・皮下浮腫. (2)羊水量. (3)推定胎児体重. (4)胎児中大動脈最高血流速度(cm/秒)観察の4項目で主治医は, 胎児貧血はないものと考えた. 【考察】文献上, IgGサブクラスの生理活性特徴において, IgG1はIgG3よりも, 補体活性化能, 単球貪食能とも低いとされている. 本症例は, IgG1単独抗KANNO抗体保有母親からの新生児に病的黄疸や貧血が見られなかったことは溶血性疾患が無かったことを示すものと考えた. また, 福島県内医療機関から血液センターへの検査依頼の内2006年から3年間の抗赤血球抗体検査状況は, 産婦人科においては11件, その72.7%(8件)はまれな血液に対する抗体であった. 今後も情報の共有を強化し日赤の専門的知識を活かし, リファレンス・ラボラトリの役割を担ってゆきたい.
ISSN:1881-3011