血液型抗原の最近の話題と適合血液の確保・供給体制

血液型抗原は, 2008年6月にマカオで開催されたISBT(国際輸血学会)において, 抗原システムはRHAGが追加されて30システム270抗原, 低頻度抗原が18抗原, 高頻度抗原9抗原, 未分類が12抗原となり, 計309抗原となった. 近年の分子生物学の進歩により, 血液型抗原には輸送体, 細菌・ウイルスに対するリセプターなどいろいろな機能が解明されてきており, 中には他臓器にも発現し, 疾患との関連も指摘されている. 例えば, 日本人で見出されているI-型の人は先天性白内障の合併が多いが, 遺伝子解析によりi→Iに関連する糖転移酵素が水晶体上皮の形成にも関与していることが解明された. ま...

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1. Verfasser: 谷慶彦
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:血液型抗原は, 2008年6月にマカオで開催されたISBT(国際輸血学会)において, 抗原システムはRHAGが追加されて30システム270抗原, 低頻度抗原が18抗原, 高頻度抗原9抗原, 未分類が12抗原となり, 計309抗原となった. 近年の分子生物学の進歩により, 血液型抗原には輸送体, 細菌・ウイルスに対するリセプターなどいろいろな機能が解明されてきており, 中には他臓器にも発現し, 疾患との関連も指摘されている. 例えば, 日本人で見出されているI-型の人は先天性白内障の合併が多いが, 遺伝子解析によりi→Iに関連する糖転移酵素が水晶体上皮の形成にも関与していることが解明された. また, Lewis抗原は, 溶液性として唾液や体液, 赤血球以外にもリンパ球, 血小板, さらに組織として胃粘膜, 大腸などにも発現しており, 消化器癌の重要な腫瘍マーカーであるCA19-9はsLea抗原であり, Le(a-b-)型のヒトはその値がほぼ0となり, 血液型による検査値への影響がある. さらに, 血液型を調べることで他疾患との鑑別ができる場合もある. 舞踏病患者の中でchorea, chorea acanthocytosis, McLeod症候群の鑑別は, KxとKellの抗原量, 赤血球の形態(acanthocyte)およびCPKなどの検査により総合的に診断できる. また従来, 赤血球膜の抵抗性試験用として開発されたCPC(Coil Planet Centrifuge)法を我々は造血細胞移植におけるABO不適合移植の生着確認として応用した. キメラ状態の検出感度が0.1%とFCM法や試験管法より高感度で検出でき, A, B抗原の消失や発現を見ることで生着や拒絶を確認できる. 移植後にまれな血液型の解凍赤血球製剤を輸血した症例において, その経過をCPC法で追跡した結果, 輸血した赤血球の生体内の寿命が約90日であることを確認した. まれな血液型とは, 検出頻度が1/1000以下か複数抗原が陰性の血液を指す. 日本赤十字社では, 特に検出頻度の低いものをI群とし, それより頻度の高いものをII群に分類して冷凍血液で10年間保管している. まれな血液型も人種により検出頻度は日本とは異なり, 世界的な調整を含めてISBTで国際協力ができる体制をとっている. 日本におけるまれな血液の供給体制は, 地元の血液センターに依頼があり, 当該センターにない場合, 地域を統括する基幹センター, 次に全国の調整を行っている大阪センター, さらに日本国内でない場合は海外へ協力要請を行って確保するようなシステムを構築している. 逆に海外へのまれ血の供給も行っており, 1995年から2007年までの間に19ヵ国29回で286単位もの血液を供給している. 不規則抗体に対応する抗原陰性の血液については, 事前に発生頻度の高い対象抗原(大阪センターでは, C, c, E, e, Jka, Jkb, Fyb, Dia, M, Lea, P1の11種類)を事前にスクリーニングを行い, 抗原陰性候補血として管内の血液センターに在庫し, 急な供給依頼の対応に備えている. 最後に, 日本赤十字社では, 法律にも規定されているとおり社会的要求の「安全な血液製剤の安定供給」を遂行するにあたり, 高度化する安全対策や品質管理, 献血人口分布の変化(少子高齢化, 過疎化)に対応して安定供給を図り, 健全な財政基盤を確立するために業務の集約と広域化を行っている. 医療機関, 患者さんへのサービス低下を招かないことを前提に現在, 検査業務は全国で10ヶ所に集約を完了し, 製剤業務は第1段階として平成21年度を目途に18か所に, 更に平成25年度には11か所への集約を予定している.
ISSN:1881-3011