21. 抗HLA抗体と抗HPA-4b抗体を保有していた患者へ適合血小板を供給した事例について

【はじめに】血小板上にはHLA(human leukocyte antigen)やHPA(human platelet antigen)等の同種抗原が存在し, 妊娠や頻回血小板輸血によって抗HLA抗体や抗HPA抗体が産生される場合がある. これらの抗体を保有している患者では血小板輸血時に輸血効果が得られないことが多い. また抗HLA抗体は発熱などの非溶血性副作用や時として重篤なTRALI(transfusion related acute lung injury)を引き起こすこともある. 今回, 血小板輸血時に輸血効果を得ることが出来なかった患者血清中に抗HLA抗体と抗HPA抗体が認められ,...

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Veröffentlicht in:日本輸血細胞治療学会誌 2008, Vol.54 (1), p.61-62
Hauptverfasser: 小田秀隆, 徳永倫子, 黒田ゆかり, 吉武国利, 朝倉健, 徳永和夫, 佐藤博行, 柏木征三郎
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:【はじめに】血小板上にはHLA(human leukocyte antigen)やHPA(human platelet antigen)等の同種抗原が存在し, 妊娠や頻回血小板輸血によって抗HLA抗体や抗HPA抗体が産生される場合がある. これらの抗体を保有している患者では血小板輸血時に輸血効果が得られないことが多い. また抗HLA抗体は発熱などの非溶血性副作用や時として重篤なTRALI(transfusion related acute lung injury)を引き起こすこともある. 今回, 血小板輸血時に輸血効果を得ることが出来なかった患者血清中に抗HLA抗体と抗HPA抗体が認められ, HPA適合のHLA適合血小板を供給した. 【対象】2007年5月に当施設へ検査依頼があった49才, 女性で原疾患は急性骨髄性白血病の患者. 【方法】抗HLA抗体検査はAHG-LCT(anti-human globulin lymphocyto cytotoxicity test)法およびFlow-PRA screening test(ワンラムダ社)で, 抗HPA抗体検査はanti-PLT・オリビオ・MPHA II(mixed passive hemagglutination, オリンパス社)法およびanti-HPA・MPHA・パネル(オリンパス社)で行った. HLAタイピングにはWAKFlow-A, B, C(湧永製薬社)を, HPAタイピングにはジェノサーチHPA(医学生物学研究所)を用いた. 適合献血者検索は赤十字血液センター全国統一システム「HLA検査(患者)」に本人のHLAタイプ, 抗体検査結果および許容抗原を入力し, 「HLA適合献血者検索」により適合献血者セレクションおよび適合者リスト(HLA+HPA)出力を行った. 輸血効果の評価は輸血後24時間の補正血小板増加数(CCI)により行った. 【結果】抗HLA抗体検査の結果は, AHG-LCT法陽性でその特異性はB7+B22+αであり, FlowPRA screening testも陽性であった. 抗HPA抗体検査の結果はanti-PLT・オリビオ・MPHAIIで陽性を示し, anti-HPA・MPHA・パネルにおいて特異性は4bと判定された. 適合献血者検索の結果, 福岡県内におけるHLAだけが適合している献血者は168名で, そのうちHPAタイプが適合している献血者が64名であった. 輸血効果については, 患者の抗血小板検査依頼前にランダム濃厚血小板製剤を供給した際の平均CCIは0.03以下(n=8)で輸血効果が無く連日の輸血が必要であったが, HPAも適合しているHLA適合濃厚血小板輸血後の平均CCIは1.56(n=6)であり顕著な輸血効果が見られた. 【まとめ】今回患者本人のHLAタイプが一般的で, 抗HPA抗体が低頻度抗原に対する抗体であったことなどからHPAも適合した血小板製剤を供給することができた. 当血液センターではHLA適合血小板献血者のプール拡大にも努めているが, 本人のHLAタイプが稀で広範囲特異性抗体保有患者の場合の適合献血者は少数である. 今後, 当施設ではHLA適合献血者のプールをさらに増やし, HPAタイピングを実施することでHLA・ HPA適合血小板製剤の円滑な供給につなげていきたい. また, 医療機関における輸血効果の確認と迅速な検査依頼が効果ある血小板輸血につながると考えられる.
ISSN:1881-3011