8.ATLに対する同種造血幹細胞移植の皮膚再発におけるgraft-versus-ATL効果

【はじめに】近年, 成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)に対する同種造血幹細胞移植で予後の改善が報告され, その臨床効果としてgraft-versus-ATL(Gv-ATL)効果が注目されている. 今回, 過去7年間に当科で同種造血幹細胞移植を施行したATL21例について後方視的に検討し, 移植後の再発とGv-ATL効果について報告する. 【対象・方法】対象は1998年6月から2005年5月までに同種造血幹細胞移植を施行したATL21例(移植回数24回)である. 移植症例の臨床的背景, 移植成績再発や再発部位, GVHDの発症とGv-ATL効果の可能性について検討した. 【結果】男性13例, 女...

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Veröffentlicht in:日本輸血細胞治療学会誌 2007, Vol.53 (1), p.76-77
Hauptverfasser: 米倉健太郎, 金蔵拓郎, 中野伸亮, 竹内昇吾, 高塚祥芝, 宇都宮與
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:【はじめに】近年, 成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)に対する同種造血幹細胞移植で予後の改善が報告され, その臨床効果としてgraft-versus-ATL(Gv-ATL)効果が注目されている. 今回, 過去7年間に当科で同種造血幹細胞移植を施行したATL21例について後方視的に検討し, 移植後の再発とGv-ATL効果について報告する. 【対象・方法】対象は1998年6月から2005年5月までに同種造血幹細胞移植を施行したATL21例(移植回数24回)である. 移植症例の臨床的背景, 移植成績再発や再発部位, GVHDの発症とGv-ATL効果の可能性について検討した. 【結果】男性13例, 女性8例, 移植時の年齢の中央値は49歳(37~62歳), ATLの臨床病型は急性型18例, リンパ腫型2例, 慢性型1例であった. 移植前の寛解状態は完全寛解(CR)7例, 部分寛解(PR)1例, 不変(SD)5例, 増悪(PD)8例で, 骨髄破壊的移植が10例, 骨髄非破壊的移植が11例であった. 骨髄移植が5例, 末梢血幹細胞移植が13例, 臍帯血移植が3例で, HLA一致の移植が14例, 不一致の移植が7例であった. 初回化学療法から移植までの期間の中央値は5.7カ月(3.1~27.0カ月)であった. 移植後の全生存期間の中央値は8.4カ月(1.4~83.7+カ月)で, 生存7例の観察期間の中央値は28.0+カ月(4.3~83.7+カ月)であった. 21例の3年生存率は33.2±10.9%であった. 移植時の寛解状態別全生存率の検討では, CR/PR/SDの13例はPDの8例に比し同種移植後の全生存率が有意に優れていた(P<0.05). 移植後100日以上の生存例は15例で, これらのうち10例が再発・再増悪した. 再発10例のうち9例が皮膚に再発, 末梢血4例, リンパ節3例, 中枢神経1例であった. 再発・再増悪のみられた10例全例で免疫抑制剤が中止された. 免疫抑制剤の中止後9例でGVHDが発症し, このうち7例でGVHD発症後にATLは改善し寛解が得られた. 再発・再増悪のみられた10例のうち, もともと皮膚にもあった病変が治療によって消失後再度出てきたものが5例, 発症からの全経過中一度もみられていなかった皮膚病変が初めて現れたものが4例あった. 皮膚再発した9例中5例は皮膚のみの再発であった. 皮膚のみに再発した5例のうち免疫抑制剤の中止や減量にて4例に完全寛解が得られた. 【考察】当科におけるATLの同種造血幹細胞移植の成績について報告した. 同種造血幹細胞移植を施行した21例の同種移植後の全生存期間の中央値は8.4カ月で, 3年全生存率は33.2%であり, 決して良好な移植後成績とは言い難かった. よい成績が得られなかった原因としては非寛解例(SD+PD)が21例中13例と多く, HLA不一致移植も7例と多かったことが考えられた. 一方, 同種造血幹細胞移植後の再発例において免疫抑制剤の中止のみで完全寛解が得られ, Gv-ATL効果が確認された. また, 同種造血細胞移植後のATLの再発は皮膚におこりやすく, 皮膚再発に対してはよりGv-ATL効果が働きやすい可能性がある. Gv-ATL効果の標的抗原としてはHLA抗原やマイナー組織融合性抗原の他にTax蛋白, Tax以外のHTLV-1ウイルス抗原などが考えられる. 今後これらの標的抗原を明らかにする必要があるが, これらの免疫学的効果(Gv-ATL効果)がATLの同種造血幹細胞移植後の長期生存と関連がある可能性が考えられた.
ISSN:1881-3011