Occult HBV carrierによる感染事例から得られた知見について

2004年10月に医療機関から輸血後HBV感染が疑われる症例が報告された. この患者に輸血された33本全てについて個別核酸増幅検査(個別NAT)を行ったところ, 一人の献血者から得られた血液が陽性と確認され, 患者と当該血液のHBBV-DNA sequenceはほぼ一致し, 因果関係が認められた. この献血者は, 54歳男性で過去11年間に78回の献血歴があり, HBs抗原陰性で個別NATが所々で陽性となるoccult HBV carrierであった. 同献血者の血液は, 過去3回, 輸血後HBV感染の疑いとして報告された患者に使用されていた. 報告を受けた時点では, 個別NATが全て陰性であ...

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Veröffentlicht in:日本輸血細胞治療学会誌 2006, Vol.52 (5), p.599-606
Hauptverfasser: 梶本昌子, 藤井基裕, 松本善行, 石井博之, 宮田義久, 稲葉頌一, 星友二, 鈴木光, 柚木久雄, 田中正嗣, 丸田壱郎
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:2004年10月に医療機関から輸血後HBV感染が疑われる症例が報告された. この患者に輸血された33本全てについて個別核酸増幅検査(個別NAT)を行ったところ, 一人の献血者から得られた血液が陽性と確認され, 患者と当該血液のHBBV-DNA sequenceはほぼ一致し, 因果関係が認められた. この献血者は, 54歳男性で過去11年間に78回の献血歴があり, HBs抗原陰性で個別NATが所々で陽性となるoccult HBV carrierであった. 同献血者の血液は, 過去3回, 輸血後HBV感染の疑いとして報告された患者に使用されていた. 報告を受けた時点では, 個別NATが全て陰性であったため, 感染の因果関係が立証できなかった. 今回, 過去の3例のうち2例について, 発病時の患者検体と献血者血液のHBN-DNAに相同性(99.8~99.9%)が認められ肝炎の原因血であったことをほぼ証明することができた. さらに献血者の過去40回分の保管検体について個別NATを行うことができた. 輸血後6ヵ月以上の調査が可能であった12名の受血者は全て血液疾患患者で化学療法時に輸血をうけていた. うち4名は輸血後血清学的HBVマーカーの陽転化が認められたが, 他の4名に陽転化は認められなかった. 本症例は, 個別NATを実施してもすべてのoccult HBV carrierを検出するのは困難であることを証明した. また免疫機能低下患者においては, 個別NAT陰性であるoccult HBV carrierの血液により感染するだけでなく, 肝炎を発病することが明らかとなった.
ISSN:1881-3011
DOI:10.3925/jjtc.52.599