2.末梢血CD4陽性Tリンパ球のHIV-1DNA定量の臨床意義

我が国におけるHIV感染者の数は年々増加しているが, 献血に出向き, HIV抗体陽性と判明する事態も起こっている. HIV感染症の治療は逆転写酵素阻害剤とプロテアーゼ阻害剤の開発により大きな前進を遂げた. 即ち, これらの治療薬を用いた多剤併用療法(HAART)によりHIV感染症のエイズへの進展を抑制し, また, エイズによる死亡率も大幅に減少している. 血中ウイルス量の定量測定(50コピー/mLの濃度まで検出可能)と末梢CD4陽性Tリンパ球の定量測定がこの治療法の指標となる. しかし, HAARTにより血中ウイルス量を検出感度以下にコントロールできても根治には至らない. それはRNAをゲノム...

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Veröffentlicht in:日本輸血学会雑誌 2006, Vol.52 (3), p.439-439
1. Verfasser: 濱口元洋
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:我が国におけるHIV感染者の数は年々増加しているが, 献血に出向き, HIV抗体陽性と判明する事態も起こっている. HIV感染症の治療は逆転写酵素阻害剤とプロテアーゼ阻害剤の開発により大きな前進を遂げた. 即ち, これらの治療薬を用いた多剤併用療法(HAART)によりHIV感染症のエイズへの進展を抑制し, また, エイズによる死亡率も大幅に減少している. 血中ウイルス量の定量測定(50コピー/mLの濃度まで検出可能)と末梢CD4陽性Tリンパ球の定量測定がこの治療法の指標となる. しかし, HAARTにより血中ウイルス量を検出感度以下にコントロールできても根治には至らない. それはRNAをゲノムとするHIVがプロウイルスというかたちでDNAに潜り込み, 且つ非常に寿命の長い休止期CD4陽性Tリンパ球もその感染標的にされるからである. 従って, HAARTを中止するとHIV-1は速やかに増殖を再開しウイルス血症に至るため, 抗HIV薬は生涯服用し続けざるを得ない. 一方で, HIV感染者間で長期AIDS未発症者も存在する. 今回, 我々はHIV-1DNA高感度定量法により, 未治療HIV-1感染者とHAART施行中患者を対象に末梢血CD4陽性Tリンパ球中のプロウイルスを, 長期未発症者に関しては白血球中のプロウイルスを定量した. 未治療患者群ではHIV-1DNAは98120コピー/106細胞~検出感度(200)以下の広範囲に分布した. また, HAART施行中患者の治療著効例(Viral Load(VL)50群では11900~検出感度(2)以下(中央値1700)に分布した. また, 長期未発症者では112コピー/106白血球~検出感度(2)以下(中央値7)に分布した. 以上の結果からHIV-1DNAの定量は感染病態の把握, Tリンパ球リザーバーのサイズを推定する上で有効な指標になると思われる. 特にHAART著効患者において, 血中ウイルス量が検出感度以下になってからの治療効果を評価でき, 治療中止できる可能性も生じる.
ISSN:0546-1448