17. 僧房弁閉鎖不全症の術前自己血貯血中に抗Jra抗体が確認され, 手術計画の再検討を要した1例
【はじめに】術前の不規則抗体のスクリーニング検査により, 2~3%程度の症例に不規則抗体が同定される. 高頻度抗原に対する抗体が検出される例においては, 適合血の準備はきわめて困難であり, 手術計画自体の再検討を要することがある. 今回我々は心臓外科術前自己血貯血中に代表的な高頻度抗原である抗Jra抗体を有する症例を経験したため, その経緯について報告する. 【症例】症例は78才女性, 僧房弁閉鎖不全症の術前貯血目的にて2005年5月24日輸血部へ紹介される. 紹介時身長151cm, 体重59kg, 血色素12.0g/dlであった. 予想平均出血量は1200mlということであったが, 手術まで...
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Veröffentlicht in: | 日本輸血学会雑誌 2006, Vol.52 (1), p.106-107 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 【はじめに】術前の不規則抗体のスクリーニング検査により, 2~3%程度の症例に不規則抗体が同定される. 高頻度抗原に対する抗体が検出される例においては, 適合血の準備はきわめて困難であり, 手術計画自体の再検討を要することがある. 今回我々は心臓外科術前自己血貯血中に代表的な高頻度抗原である抗Jra抗体を有する症例を経験したため, その経緯について報告する. 【症例】症例は78才女性, 僧房弁閉鎖不全症の術前貯血目的にて2005年5月24日輸血部へ紹介される. 紹介時身長151cm, 体重59kg, 血色素12.0g/dlであった. 予想平均出血量は1200mlということであったが, 手術まで3週間であり, 年令も考慮, 当初は一回量200mlとして計3回(総量600ml)の計画で貯血開始となった, しかしながら平行して行った不規則抗体スクリーニング検査が陽性となり, 6月始めに抗Jra抗体が確認された. すぐに手術日程の変更(延期)が決められ, 以下の通り輸血の対応を行った. 1. 自己血貯血は一回貯血量は300mlへ増量, エリスロポイエチンの併用を行い, さらに戻し貯血も併用することで1600mlの自己血の準備を行った, 2. 日赤に保管されている適合凍結赤血球の在庫と必要時の対応法について調査を行った. 3. 血縁者の血液型, Jra抗原についての検索を施行した. 4. 以上の結果を踏まえて, 術前に患者, 家族とやむをえず不適合輸血を行う可能性も含めて話し合いを行った. 7月6日手術は無事終了, 自己血1600mlとJra陰性解凍赤血球800mlを当日及び翌日で輸血した. 【考察】Jra抗原は代表的な高頻度抗原であり, 民族的にもっとも陰性例が多いとされる日本人においても適合率は0.03%程度である. 不適合輸血による重篤な副作用の報告はないが, 様々な溶血反応を示す可能性が知られており, 臨床的に適合血を準備すべき抗体とされている. 以上のように高頻度抗原に対する抗体陽性例においては, 患者の基礎疾患の病態, 適合血の頻度, 抗体の臨床的意義等を踏まえ, 自己血を中心に様々な対策を検討する必要がある. |
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ISSN: | 0546-1448 |