14. 同種造血幹細胞移植後のSTR解析の有用性と今後の課題

I. 背景 当院では小児科および血液内科において骨髄末梢血(ミニ移植を含む), 臍帯血を用いた同種造血幹細胞移植が行われており輸血部では1996年から移植後の生着確認のためにDNA多型解析を導入している. 当初はVariable Number of Tandem Repeat:VNTRを用いた解析が行われており遺伝子マーカには多型性が高いDIS80もしくはD17S5(Life Codes社)を用いていた. 解析にはミニゲル電気泳動装置を用いSYBR green Iにてバンドを検出していた. また, 併せて異性間移植症例のためにX, Y染色体両方に認められる性染色体特異的遺伝子のAmelogen...

Ausführliche Beschreibung

Gespeichert in:
Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:日本輸血学会雑誌 2006, Vol.52 (1), p.104-105
Hauptverfasser: 舞木弘幸, 古川良尚, 小浜浩介, 肥後恵子, 出口紀子, 瀬戸口朋絵, 丸山征郎
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
Tags: Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
Beschreibung
Zusammenfassung:I. 背景 当院では小児科および血液内科において骨髄末梢血(ミニ移植を含む), 臍帯血を用いた同種造血幹細胞移植が行われており輸血部では1996年から移植後の生着確認のためにDNA多型解析を導入している. 当初はVariable Number of Tandem Repeat:VNTRを用いた解析が行われており遺伝子マーカには多型性が高いDIS80もしくはD17S5(Life Codes社)を用いていた. 解析にはミニゲル電気泳動装置を用いSYBR green Iにてバンドを検出していた. また, 併せて異性間移植症例のためにX, Y染色体両方に認められる性染色体特異的遺伝子のAmelogenin遺伝子の解析も行われていた. その後, DIS80もしくはD17S5のみではRecipientとDonorの識別が困難である症例が認められ追加検査にShort Tamdem Repeat:STRを併用することになった. STRの遺伝子マーカにはD16S539, D7s820, D13S317(Promega社)を用いMultiplex PCRにより同時に増幅した. 解析にはシークエンサー用のLongゲルを用い銀染色にてバンドを検出した. その後, Mixed Chimeraを呈する症例では定量が必要となり現在行われているDNAシークエンサーを用いたSTR解析が行われるようになった. 2004年4月から2005年3月までに当院で行われた同種造血幹細胞移植は20例であり, 全例においてDNAシークエンサーを用いたSTR解析が行われた. STRによる移植後のキメリズム解析の件数は91件であり前年度の2003年4月から2004年3月までに行われた件数32件に対して移植症例数の増加に伴い移植後のキメリズム解析件数が増加している. 今回, 同種造血幹細胞移植後のSTR解析の有用性および今後の検討課題について報告する. II. STR解析の方法 1. DNAの抽出:末梢血, 骨髄からの抽出にはSMITEST(医学生物研究所)を用い, 移植前にRecipientの末梢血からDNAが抽出されていない場合にはSMITEST EX-R&D(医学生物研究所)を用い爪からDNAを抽出した. 2. PCRによるSTR解析:STRには多型性が高いACTBP-2もしくはAPO-A11を用いた. プライマーの末端に蛍光色素Cy5をラベルしてPCRを行いPCR産物をALF Express(Amersham Bioscience)により泳動後Alelle Linksにて解析した. III. 成績 20例中17例は移植後早期にComplete Chimeraとなり生着を確認したが, 1例は完全に拒絶され, 1例は移植後早期からMixed Chimeraを呈し移植後8カ月現在もMixed Chimeraのままである. また, 臍帯血移植後に造血能の回復が遅延した1例は移植後30日目も末梢血中の白血球の増加は認められなかったが末梢血でのSTR解析ではDonorタイプが認められた, 経過観察後, 移植後38日目頃から白血球が増加して移植後55日目には白血球が500/興Lまで回復した. 移植後67日目のSTR解析では末梢血, 骨髄ともに完全にComplete Chimeraとなり生着を確認した. 一方, ATL4例に対しては末梢血幹細胞を用いたReduced Intensity Stem cell Transplantation:RISTが行われており, 3例は移植後早期にComplete Chimeraとなり生着を確認したが1例は再発に伴いMixed Chimeraを呈した. しかし, 生着を確認した3例はその後再発を呈したが末梢血では完全にComplete ChimeraのままでRecipientタイプは認められなかった. 尚, 3症例はいずれも末梢血に異常リンパ球は認められていなかった. IV. 考察 同種造血幹細胞移植後の生着確認にSTR解析を行ってきたが移植後早期に生着を確認する上で有用であった. また, 造血能の回復が遅延する症例に対してもSTR解析により早期にDonorタイプの造血を確認することができ再移植の診断にも有用であった. 一方, 再発を呈したATL3例は末梢血のSTR解析ではRecipientタイプを確認することができなかったことから今後解析方法についての検討が必要と考えられた.
ISSN:0546-1448