10. ATL発症過程におけるウイルスの変異と宿主癌抑制遺伝子(INK4, p53)の変異
【目的】HTLV-1は輸血によっても感染しうる. 輸血による感染では痙性脊髄麻痺(HAM)が発症しうるが, 成人T細胞白血病(ATL)は発症しないとされている. しかし母子感染の場合は長い期間をかけてその一部にATLを発症してくる. ATL発症過程にはTaxによる感染細胞の増殖作用, HTLV-1に対する宿主の免疫機構からの逸脱, 癌抑制遺伝子の変異などが関与していると考えられている. ウイルス側については(1)Taxの機能を失うようなpremature stop codonやその他の変異, (2)5'LTRの欠失や, 5'LTRのメチル化, (3)HBZなどによる遺伝子の...
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Veröffentlicht in: | 日本輸血学会雑誌 2006, Vol.52 (1), p.102-102 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 【目的】HTLV-1は輸血によっても感染しうる. 輸血による感染では痙性脊髄麻痺(HAM)が発症しうるが, 成人T細胞白血病(ATL)は発症しないとされている. しかし母子感染の場合は長い期間をかけてその一部にATLを発症してくる. ATL発症過程にはTaxによる感染細胞の増殖作用, HTLV-1に対する宿主の免疫機構からの逸脱, 癌抑制遺伝子の変異などが関与していると考えられている. ウイルス側については(1)Taxの機能を失うようなpremature stop codonやその他の変異, (2)5'LTRの欠失や, 5'LTRのメチル化, (3)HBZなどによる遺伝子の変異以外の要素によるHTLV-1転写の抑制などにより, TaxあるいはHTLV-1関連蛋白の発現が低下すると予想される変異がATLに高頻度にみられる. このことはATL発症過程で宿主のHTLV-1に対するCTLから逃れられるようなATL細胞が選択されている事を示している. 宿主の免疫機構からの逸脱がどの時点で生じるかという事を調べる為に, ATLでしばしばみられるpremature stop codonがキャリアーにおいてどのようなモードで見られるかをPCR, RFLP解析したところ感染細胞の一部にこのような変化が起こっているキャリアーが頻繁にみられる事がわかった. しかしながらキャリアーでは経過を追ってみてもこのようなCTLから逃れられるような変異を生じた細胞集団はそのまま増殖してくる事はなかった. 一方ATLでは宿主癌抑制遺伝子の変化についてINK4B遺伝子の欠失, p53遺伝子の変異などがそれぞれ報告されている. しかし各症例でこれらのHTLV-1側の変異と宿主の癌抑制遺伝子の変異を全てみた報告がないために, CTLからの逸脱だけで悪性度の高いATLへ進展していくのか, 癌抑制遺伝子の変異が付け加わるのかは不明である. そこで本研究ではHTLV-I taxの変異と宿主INK4, p53遺伝子の変異を同一症例において調べた. 【方法】急性型ATL23例でHTLV-1のtaxのsequence, HTLV-1サザンプロット, INK4遺伝子のサザンプロット, p53遺伝子のexon4~8までのsequenceを行った. 【成績】CTLから逃れ得るHTLV-1あるいはtaxの変異を23例中9例に認めた. INK4Bの欠失を9例に, p53遺伝子の変異を3例に認めた. HTLV-1に変異がある症例9例でもINK4Bの欠失あるいはp53の変異を4例に認めた. 【結論】ATLの発症過程ではHTLWに対するCTLから逃れる事も重要であるが, 更に悪性度の高いATLに進展する時には宿主の癌抑制遺伝子の変異が加わる事が多い事が示唆された. |
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ISSN: | 0546-1448 |